ストレス、細胞老化と心の瞑想 (SQ-11)
過度な仕事内容、厳しい納期、介護、そして家計の心配。
我々は日常の中で様々なストレスと戦っています。そのストレスが適度なレベルであれば耐えられるし見方によってはストレスから開放された時のご褒美が次へのモチベーションに繋がり意味を成すことがあります。だが、もしこのストレスの源となる事象が止めどなく押し寄せてきて開放されない時期が長期にわたり続いたらどうなるか?それは我々の健康を蝕む原因になりかねません。リミットを超えたストレスは体調を悪化させ肉体の老化を加速すると言われています。医療現場の研究者曰く、過度のストレスは痴呆、呼吸器官系の疾患、糖尿病、様々な部位の炎症、うつ病、さらに癌を促進させる恐れがある為、ストレスをうまい具合にコントロールすることは大事だと警鐘を鳴らしています。
端的にいえば、ストレスは訃報です!もしあなたが長期に亘るストレスを経験している場合、それはあなた自身の健康にダメージを与えてるだけでなく、老化を加速させているかもしれません。だからといって、体内時計を狂わせているストレスを打破できるのか?体内時計を逆再生することは考えていないものの、悪影響を遅らせることは考えても損はないだろう。
ストレスから身を守ること、それは可能なのか?
この分野の研究者によるとテロメア(末端染色小粒)が解決の糸口を持っているかもしれない。厳密に言うと、テロメアの長さが将来の健康を測定する為に肝心な要素だということ。詳しく説明するとテロメアは過度なストレスがかかると短くなる、という研究結果が出ているのである。ここからはストレス、テロメアそして細胞レベルの老化の関連性について深く掘り下げよう。(瞑想の重要性についてもふれます)
全細胞の核の中にDNA粒子は存在し、染色体という形状で核にぎっしり詰まっている。人間はこの染色体を23ペア持っている。
テロメアは各DNAの末端にあるタンパク質の一種である。
テロメアがあることによって染色体同士が結合することを防ぎ、結合による染色体異常が起こらないように働く。テロメアを研究する科学者曰く、テロメアは靴紐のほつれ防止に使われる先端物質に似てるという。さらに、テロメアは細胞分裂に至っても別の能力を発揮する。
我々の細胞は様々な理由で分裂する。単純に成長する為、または損傷、老化、死滅した細胞を補修する為に分裂する。正直な話、我々の体は一秒に何億個というペースで損傷、老化または死滅した細胞を常に新しい細胞と入れ替えている。何億個単位の細胞分裂だけでも気が遠くなるように思えるが、テロメアを含むDNAの世界はもっと深い。
- 全細胞の核の中にDNA粒子は存在し、染色体という形状で核にぎっしり詰まっている。人間はこの染色体を23ペア持っている。
- DNAの中には何千もの遺伝子(DNA)を保持していて、この遺伝子から情報を体の細部に命令として下している。
- 染色体は4つのヌクレオチド基礎から成る:アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、そしてシトシン(C)。これらのヌクレオチド基礎が連なったものがもう一つの連なったヌクレオチド基礎と螺旋状に結合して染色体となる。おもしろいのはアデニン(A)は必ずチミン(T)と結合しグアニン(G)はシトシン(C)と結合する。これらの基礎盤がどのように組み合わさるかにより我々の髪の毛の色や眼の色そして身長などが決まってくる。
- 細胞が分裂する時、核の中にある染色体を複製する、よって新しく出来た細胞は元となった細胞と同じヌクレオチド基礎の配列になる。複製を行う際に染色体は螺旋状結合をほどいて分れなければならない。
- 酵素のDNAポリメラーゼはヌクレオチド基礎の複製を手助けするが染色体を全て複製するわけではない。
細胞が分裂するのに複雑な手順が至る所にあるが、実は毎回細胞分裂するたび染色体は短くなっており25から200ほどのヌクレオチド基礎が減っている。ここでテロメアの出番である。染色体の両端はテロメアで守られている為、分裂する際に切り離されるのはテロメアの部分で肝心な遺伝子(DNA)の部分は無傷のまま処理される。テロメアとは染色体の保持している情報を続けて伸ばしたもので、この部分が切り離されることによって遺伝子(DNA)は守られているのだ。テロメアがなかったら細胞が分裂するたびに染色体の大事な情報が減っていき、繰り返されれば繰り返されるほど減って最終的には遺伝子そのものが無くなってしまうのである。テロメアも永久不滅ではない為、細胞分裂が続けば続くほど少しずつ短くなる。もしテロメアが短くなりすぎた場合、細胞は分裂できなくなりセネセンス(老化)やアポトーシス(細胞の死)が訪れる。
我々の物語は酵素テロメラーゼの登場によりもっとおもしろくなる。テロメラーゼはテロメアを守ったり再構築する役割を持ち、そのままテロメア遺伝子を追加したり短くなりすぎたテロメアに構築を繰り返す命令を出すことで遺伝子の長さを維持させる。テロメアが長ければ長いほど細胞は分裂できる回数が増え、細胞の若さを保つことができる。「テロメラーゼはリボ核タンパク質逆転写酵素で短くなったTLに対しテロメア系遺伝子(DNA)を付与する。よってテロメラーゼは短くなったテロメアの細胞を複製分裂を継続させたり死滅させるのを防ぐ。テロメラーゼは短くなりすぎてしまったテロメアを持つ細胞の寿命を延ばす効果を発揮する。」[1]
2009年、3人の科学者-エリザベス・ブラックバーン、キャロル・グレイダーそしてジャック・スゾスタック-が生理学または薬剤学においてノーベル化学賞を受賞した。彼らは染色体がテロメアとテロメラーゼにより守られていることを証明した3人だ[2]。歳を取るとテロメラーゼといったような酵素の体内量が減少し、細胞がテロメアを修復したり維持したりする能力が低下する。テロメラーゼが低い水準で活動していると細胞の融合、老化そして死を招きやすくする。
科学者によるとテロメアの長さこそが一個人の老化や将来の健康を予想するのに大きな役割を担っていると定言する。短いテロメアは様々な老化にまつわる病(呼吸器官系の劣化、2型糖尿病、変形性関節症、高血圧)と関連性が高いと訴えている。
他に何がテロメアの短縮を加速させるか?
避けられない年齢による細胞老化の他にも生活習慣によるテロメアの短縮が研究結果として出ている。それは不規則な睡眠、不健康な食生活、喫煙、飲酒そして運動不足である。2004年、エリザベス・ブラックバーン博士とそのチームは継続型精神的ストレスが老化加速、免疫力の低下そして上記にしるしたような病(呼吸器官系の劣化、2型糖尿病、変形性関節症、高血圧)の原因でテロメア短縮を加速させるという研究結果を発表した[3]。
しかし良いニュースもある。実は心を落ち着かせる瞑想がストレス改善の効果がありテロメアの長さ維持やテロメラーゼの活動にプラスな働きがあるという研究結果が出たのだ。
心の瞑想とストレス:関連は何?
心の瞑想とは何か?古くから伝わる仏教の修行から始まったとされる瞑想。瞑想を細かく砕くと、落ち着いた呼吸をゆっくり続けながら心を無にし今に意識を集中させる行為、と言われている。つまり心の瞑想やマインドフルネスとは「今」という瞬間に瞑想者を気づかせる行為なのだ。瞑想をすることにより身を取り巻くストレス、緊張そして不安を整理し許諾、そして心を落ち着かせることによって身を楽にさせる効果が期待できる。瞑想をするとマイナスな感情よりプラスな感情が芽生えやすいと言われていて悩みや不安を(個人差はあるが)軽減する働きがあるだ。仏教徒の教えによると、瞑想は精神的ストレスを解消し心の幸福感を下支えすると言われている[4]。肝心なのは、果たして瞑想は細胞の老化を予防するのに効果があるかどうか?瞑想することによってテロメアの急激な短縮を阻止または減速できるか否か、である。
2009年の研究によると瞑想はストレスの低下やテロメラーゼの増産による細胞の老化減速に一翼を担っており効果があると発表している[5]。さらに2014年の研究によると瞑想が末梢血単核細胞におけるテロメラーゼを活性化を促進するという結果も出ている[6]。2016年、スペイン人研究者によると、禅僧の方が瞑想をまったくしない同年齢の一般人よりテロメアが長い傾向にあるという研究結果が出された[7]。データを分析すると、年齢、現実の直視、そして己と他者への思いやりが瞑想と長いテロメアに深く関係しているといえる。現実回避は我々の痛々しい記憶やマイナスな感情を避ける為に行われるごく自然な行為で、この無視している行為が以外と心に負担をかける。現実回避は一時的な解決策になるかもしれないが、長期的に見ると根本的な解決策になってない為、プレッシャーになることもしばしばある。しかし瞑想やマインドフルネスを活用すると「今」の自分を認め受け入れやすくなるのでストレス緩和には効果的だ。
瞑想がテロメラーゼの活性化を促すことはもうわかったとは思うが、そのほかにも記憶力を良くしたり集中力を高める研究結果がでている。2011年に出版された「精神医学研究:ニューロイメージング」によると「瞑想をすることにより脳の感情、学習または記憶を司る部位に変化を齎す」と記載している[8]。
さらに、ストレスは慢性的な炎症を手助けするとされている。2016年の研究曰く、瞑想を長い間続けると少量のコルチゾール活動が活発化し炎症の軽減とストレス耐性を強化する。研究結果内容の中に「長期に亘る瞑想はストレス耐性を付与することにより慢性的な炎症に対する治療の一部として期待が出来る」と記している。[9]
2016年最新の研究では瞑想やマインドフルネスが心的外傷後ストレス(PTSD)の治療に役立つ可能性を秘めていると打ち明けた[10]。瞑想を取り入れたトレーニングがPTSDに悩まされていたアフガニスタンやイラクに派遣されていたアメリカ兵の脳内でプラスの脳内変化が見られたと発表されている。これらのポジティブな脳内変化はネガティブな感情や生産的でない思考の反芻を食い止めてプラスに転じるものらしい。
2009年に発表された「瞑想は細胞の老化を減速させられるか?思考的ストレス、マインドフルネスそしてテロメア」という研究資料の中でこう綴られている、「サバイバル的観点からストレスは重要な役割を担っているが、もしそのストレスが不健全な影響を継続的に与えている場合、細胞の若さを著しく痛めつける可能性がある…H.H.(ダライラマ)曰く、理由と分析に基づいた感情は一個人の意味のある態度や反応に繋がる。しかし、もしその感情が負の妄想や恐怖に基づくものならば一個人の寿命を縮める危険性を孕んでいる」。
どうやら瞑想は日々のストレスと寿命を延ばすのに凄く役立つメソッドなのかもしれない。心の平穏が我々の健康に齎す恩恵、凄いとは思いませんか?
翻訳者: 千葉将臣
参考:
- Elissa Epel, Jennifer Daubenmier, Judith T. Moskowitz, Susan Folkman and Elizabeth Blackburn. Can meditation slow rate of cellular aging? Cognitive stress, mindfulness, and telomeres. Ann N Y Acad Sci. 2009 Aug; 1172: 34–53.
- The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2009. NobelPrize.org
- Elissa S. Epel, Elizabeth H. Blackburn, Jue Lin, Firdaus S. Dhabhar, Nancy E. Adler, Jason D. Morrow and Richard M. Cawthon. Accelerated telomere shortening in response to life stress. PNAS 2009.
- Dalai Lama and Cutler, 2009.
- Epel et al. Can meditation slow rate of cellular aging? Cognitive stress, mindfulness, and telomeres. Ann N Y Acad Sci. 2009 Aug; 1172: 34–53.
- Schutte NS, Malouff JM. A meta-analytic review of the effects of mindfulness meditation on telomerase activity. Psychoneuroendocrinology. 2014 Apr;42:45-8.
- Alda et al. Zen meditation, Length of Telomeres, and the Role of Experiential Avoidance and Compassion. Mindfulness. February 2016
- Hölze et al. Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Research: Neuroimaging. 2011.
- Rosenkranz et al. Reduced stress and inflammatory responsiveness in experienced meditators compared to a matched healthy control group. Psychoneuroendocrinology. 2016
- King et al. ALTERED DEFAULT MODE NETWORK (DMN) RESTING STATE FUNCTIONAL CONNECTIVITY FOLLOWING A MINDFULNESS-BASED EXPOSURE THERAPY FOR POSTTRAUMATIC STRESS DISORDER (PTSD) IN COMBAT VETERANS OF AFGHANISTAN AND IRAQ. Depression and Anxiety. 2016.
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