ビタミンK2と心臓の健康を結びつけるものは何か? (SQ-83)
様々なビタミンやミネラルは大切であり、さらに心臓の健康に対しても重要な意味を持ちます。CoQ10、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンDなどを含むこの栄養素リストは、すべてが異なるメカニズムで心臓の健康を維持し、心臓疾患を引き起こす可能性があるリスク要因を防ぎます。
しかし、心臓と骨の健康に大きな恩恵を与える上で重要な役割を持つにもかかわらず、あまり目立っていないビタミンが一つあります。今回は、血液凝固に非常に重要な役割があることでよく知られており、本質的には脂溶性ビタミンのグループである、ビタミンKについて話そうと思います。ビタミンKには二つの種類があります。
ビタミンK1(フィロキノン): 緑葉野菜、植物油に含まれる。
ビタミンK2(メナキノン):納豆、チーズといった発酵食品、いくつかの乳製品に含まれる。
適切な血液凝固にはすべてのKビタミンが必要ですが、丈夫な骨と健康な心臓機能の維持により際立つのは、ビタミンK2 です。
心臓健康ビタミンのK2
ビタミンK2は、体内の非常に重要な機能を複数担っています。体が適切にカルシウムを使う手助けをすることは、その役割の一つです。
カルシウムは、丈夫な骨や歯、筋収縮、正常心拍の維持、ホルモン分泌の調節、血液凝固、そして神経細胞が互いに通信し合う神経衝撃(インパルス)の伝達などを含む、多くの必須機能に不可欠な、非常に重要なミネラルです。
しかし、カルシウムが多すぎると、腎臓結石、便秘、けいれんや筋けいれんを引き起こす筋肉の異常収縮、さらには不整脈(不規則な心拍)などの健康問題を引き起こす可能性があります。さらに、過剰なカルシウムは血管や動脈に沈着し、アンギナ(急性扁桃炎)、心臓発作、脳卒中などを引き起こす冠動脈心疾患の大きなリスク要因である、アテローム性動脈硬化症(血管が厚くなり狭くなってしまう症状)の発症に関わります。
K2がどのように役立つのかというと、骨や歯といった、カルシウムを必要としている場所にそれらをしっかりと届かせる役割を担っています。また、カルシウムが動脈、腎臓、その他の軟組織に蓄積することを防ぎます。では、いかにしてビタミンKはこれほど重要な役割を成し遂げるのでしょうか?
カルシウムとビタミンK2の関係
あなたの骨格は常に再構築のプロセスを経ており、古い骨は破骨細胞と呼ばれる特殊な骨によって分解され、骨芽細胞とよばれる骨細胞の助けを借りて新しい骨を形成します。このプロセスの中で、体はカルシウムを血流の中に放ち、血中のカルシウムレベルを維持して、同時に骨格を無傷な状態に保ちます。
骨芽細胞はオステオカルシンという、血流からカルシウムを排除し、それを骨組織に結合するタンパク質を生成します。このプロセスより、丈夫で骨折しにくい骨格が作られます。しかし、オステオカルシンはビタミンK2に依存することで完全に活性化し、血流中を循環するカルシウムに結合することができます。したがってK2は、カルシウム、ビタミンD、マグネシウムなどの栄養素と共に、骨の健康に重要な役割を担うのです。
では実際にどのように機能するのかを見てみましょう。カルシウムは健康な骨に必要で、カルシウムを吸収するためにはビタミンDが必要です。さらに、ビタミンDを吸収し活用するためにマグネシウムが必要になります。ここで登場するのがビタミンK2で、カルシウムと骨のミネラル成分を結合するオステオカルシンを活性化することによって、骨の健康に貢献しています。
ビタミンK2は、主に軟骨細胞(軟骨にある細胞)および血管平滑筋細胞(構造統合性を提供し、血管の健康な収縮と拡張に関与する血管細胞)によって生成される、マトリックスGlaタンパク質(MGP)というもう一つのタンパク質を活性化するのにも役立ちます。
これは、MGPが動脈内のカルシウム蓄積を防ぐための最も重要なタンパク質の1つであることを証明しています。
ビタミンK2はMGPを活性化する
MGPは完全に活性化するためにビタミンK2を必要とするので、血流を循環する非活性のMGPレベルが高いことは、ビタミンKの不足を示しています。非活性MGPはdp-ucMGPという名前でも知られています。
血中を循環する非活性MGPは、多くの有害な健康結果と関連しており、以下はその一例です。
- 動脈壁硬化[1]
- 健康な女性の冠動脈石灰化とビタミンKの状態[2]
- 2型糖尿病患者の心血管疾患リスクの増加[3]
- 2型糖尿病患者の末梢動脈における広範な石灰化[4]
- 2型糖尿病患者の大動脈硬化[5]
- 慢性腎臓疾患慢性腎臓疾患の血管石灰化[6]
ビタミンK2不足と心臓疾患リスク
ビタミンK2レベルの低下は、オステオカルシン(カルシウムを骨に供給するために必要)とMGP(血管からカルシウムを排除し、動脈壁やその他の軟組織動脈にカルシウムが蓄積することを防ぐために必要)の活性を損ないます(特に食品やサプリメントを通じたカルシウム摂取量が過度に高い場合)。活性オステオカルシンと MGPが不在だと、体はカルシウムを適切に活用することができなくなり、軟組織石灰化のリスクが増加します。これは、心血管問題の高いリスクを含む、健康全体に大きな被害をもたらします。
2017年にニュートリエンツジャーナルに掲載されたリサーチでは、ビタミンKレベルの低下と心血管の不健康の強い関連性を示しています。研究では、ほぼ3人に1人の参加者がビタミンK不足とされ、高血圧、2型糖尿病、慢性腎臓疾患、心血管疾患など、その他の病気で苦しむ人々の間において、この有病率が非常に高いことが分かりました。[7]
ビタミンK2サプリメントが役立つ証拠
以前の研究では、ビタミンK2の高摂取が以下のものと関連づけられています。
- 動脈石灰化と心血管リスクの減少[8]
- 冠動脈心疾患リスクの減少[9]
- 閉経後の女性の冠動脈石灰化リスクの減少[10]
- (特に高い動脈壁硬化を持つ)健康な閉経後の女性の動脈壁硬化の減少[11]
新しい臨床試験では、ビタミンK2の補充が、腎移植後の患者のビタミンK不足、および動脈壁硬化を減少させることを示しました。[121]動脈壁硬化は、心血管疾患の重要なリスク要因であり、全ステージの慢性腎臓疾患患者の死亡原因と関連しています。[13]
ビタミンK2とK1
血液凝固のために両方のビタミンKが必要です。しかしこれらのビタミン(K1とK2)は、吸収のされ方、体全体の組織への運ばれ方が異なっています。K1とK2がそれぞれ違った健康結果になり得る理由はここにあります。
ビタミンK1は緑葉野菜に含まれていますが、これらの食品を健康な脂肪と組み合わせない限り、ビタミンK1は体にうまく吸収されません。ビタミンKは脂溶性の栄養素で、吸収を促進するために健康な脂肪と一緒に摂取する必要があります。
さらにビタミンK2はK1よりも長い側鎖を持ち合わせています。これはK2を循環に長く留まらせるのに役立ちます。これによりK2は、骨や血管を含む、体全体の組織により良く吸収、利用されます。ビタミンK1は主に肝臓に運ばれ、血液凝固のプロセスに必要なタンパク質の活性化に利用されます。
ビタミンK2の心臓の健康へのメリットを認めるほとんどの研究では、心保護作用に関与しているのはビタミンK1ではなくK2であると示しています。
あなたはビタミンK2不足のリスクに曝されていますか?
納豆、チーズ、ザワークラウトなどの発酵食品は、ビタミンK2を豊富に含んでいます。食生活に発酵食品を含んでいない人は、この「骨と健康な心臓の」ビタミンが不足していることが多いです。肉、卵、乳製品などの動物性製品からも、多少のK2は摂取することができますが、体の健康なビタミンK2状態を維持するには不十分な量です。
K2不足のリスクを高める可能性があるその他の要因には、以下が含まれます。
- 腸内細菌叢を一掃する抗生物質の長期使用
- 低脂肪の食事(この脂溶性ビタミンを吸収、利用するには、脂肪が必須)
- セリアック病やクローン病などの消化管の問題(これらは吸収不良を引き起こす可能性がある)
- スタチンの使用(コレステロールを下げる薬)
- 肝臓疾患
K2レベルが低いと、血管の石灰化によって心臓の健康状態が悪くなることで知られています。また、K2レベルが低いと骨の健康にも影響をもたらし、時間をかけて骨折や骨粗しょう症のリスクを増加させます。ビタミンK2は食事だけから摂取するのは困難なため、その機会を失っていたあなたにとってビタミンK2サプリメントの摂取は、不足を解消し、健康に複数の利益をもたらす効果的な戦略といえるでしょう。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Pivin et al. Inactive Matrix Gla-Protein Is Associated With Arterial Stiffness in an Adult Population-Based Study. Hypertension. 2015
- Dalmeijer et al. Circulating matrix Gla protein is associated with coronary artery calcification and vitamin K status in healthy women. The Journal of nutritional biochemistry. 2013.
- Dalmeijer et al. Matrix Gla protein species and risk of cardiovascular events in type 2 diabetic patients. Diabetes Care. 2013
- Liabeuf at al. Vascular calcification in patients with type 2 diabetes: the involvement of matrix Gla protein. Cardiovasc Diabetol. 2014
- Sardana et al. Inactive Matrix Gla-Protein and Arterial Stiffness in Type 2 Diabetes Mellitus. Am J Hypertens. 2017
- Schurgers et al. The circulating inactive form of matrix gla protein is a surrogate marker for vascular calcification in chronic kidney disease: a preliminary report. Clin J Am Soc Nephrol. 2010
- Riphagen et al. Prevalence and Effects of Functional Vitamin K Insufficiency: The PREVEND Study. Nutrients 2017.
- J.M. Geleijnse, et al., 'Dietary Intake of Menaquinone is Associated with a Reduced Risk of Coronary Heart Disease: The Rotterdam Study,' J. Nutr. 134, 3100–3105 (2004).
- G.C. Gast, et al., 'A High Menaquinone Intake Reduces the Incidence of Coronary Heart Disease,' Nutr. Metab. Cardiovasc. Dis. 19, 504–510 (2009).
- Beulens et al. High dietary menaquinone intake is associated with reduced coronary calcification. Atherosclerosis. 2009
- Knapen et al. Menaquinone-7 supplementation improves arterial stiffness in healthy postmenopausal women. A double-blind randomised clinical trial. Thromb Haemost. 2015
- Mansour et al. Vitamin K2 supplementation and arterial stiffness among renal transplant recipients-a single-arm, single-center clinical trial. J Am Soc Hypertens. 2017
- Townsend R.R. Arterial stiffness and chronic kidney disease: lessons from the chronic renal insufficiency cohort study. Curr. Opin. Nephrol. Hypertens. 2015
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