なぜマグネシウムをビタミンDと共に摂取すべきか (SQ-98)
ビタミンDサプリメントを摂取することになる可能性は誰しもあります。そして欠乏と診断された場合、ほとんどの医者は、問題を効果的に解決するには多すぎる用量を処方するものです。こういった薬漬けの状態は、その他の健康問題を引き起こします。
ビタミンDは骨に良く、体のカルシウム吸収を助けますが、逆にビタミンDがないとカルシウム摂取が無駄になってしまいます。ビタミンD不足は、関節痛、筋力低下、疲労、その他の症状を引き起こします。サプリメントを摂取し始めることでこれらの症状が消えてくれるのが理想ですが、もし消えなかった場合は?血液検査をしてビタミンDレベルが低いままだったら?吸収に問題があるのでしょうか?
ほとんどの専門家が、マグネシウムのことを考慮せずにビタミンD摂取を推奨しています。マグネシウムはビタミンDの活性化および吸収に必要なミネラルです。そのため、マグネシウムなしでビタミンDサプリメントを摂取した場合、骨、関節、筋肉の状態が改善することなく、むしろ害を及ぼしてしまうことがあるのです。
ビタミンD代謝におけるマグネシウム
カルシウムとリンを腸から吸収するために、健康な量のビタミンDが必要です。ビタミンDはこのようにして丈夫で健康な骨と筋肉作りに貢献しています。ビタミンD不足は骨密度の減少につながり、子供にはくる病を、成人には骨粗しょう症を引き起こします。骨粗しょう症は、骨折しやすくなる脆弱骨を特徴としています。
骨の弱化を予防し、疲労、筋肉痛、関節痛といった症状を改善するためにビタミンDが必要なのは、今やよく知られた事実です。しかしここで強調しなければならないのは、体が日光から合成したり、サプリメントから得ているビタミンDを正しく使用するために、マグネシウムも必要であるということです。ほとんどの栄養素は単独では機能しないため、これは驚くべきことではありません。栄養素を作り出す、もしくは活性化させるには、別の栄養素が必要なのです。鉄分とビタミンCの相互関係はこの典型的な例です。別の有名な例としては、もちろん、カルシウムとビタミンDの関係が挙げられるでしょう。
では、マグネシウムとビタミンDの相互関係はどのようにして機能するのでしょうか?
マグネシウムは、体内において何百もの生化学反応を作り出すのに重要な余因子です。これらの反応やプロセスの実施に関与する、600以上の酵素系を活性化します。マグネシウムの全体的な機能および健康効果については後ほど紹介しますが、まずはビタミンD代謝の役割を見てみましょう。
ビタミンDは不活性型(25[OH]D)で蓄えられており、体が使用する前にカルシトリオール(1,25[OH]2D)と呼ばれる活性型に変換される必要があります。その生物学的機能すべて行うのはカルシトリオールです。ここで、蓄えられている不活性型ビタミンDを活性型へと変換するためにマグネシウムが必要になります。もしマグネシウムがなければ、ビタミンDは不活性型で蓄えられたままです。言い換えるなら、ビタミンDは豊富にあるにも関わらず、細胞がそれを使うことができないのです。
また、マグネシウムはビタミンD代謝に関与する酵素も活性化します。マグネシウムは肝臓および腎臓の酵素反応における不可欠な余因子として機能します。
アメリカオステオパシー協会(the American Osteopathic Association)のジャーナルで発表された2018年の研究では、低マグネシウム状態だとビタミンDはそれらに効果的ではないことが示されています。以下のように結論されています。「これらの栄養素いずれかの不足は、骨格変形、心血管疾患、メタボリックシンドローム(代謝症候群)といったさまざまな障害と関連していることが報告されている。したがって、ビタミンDの最適な効果を得るために、推奨されたマグネシウム量を消費することが不可欠である。」 [1]
この研究の共著者であるモハンマド・S・ラザック氏は、マグネシウムなしではビタミンDは役に立たず、むしろ危険であるとしています。ラザック氏の説明では、ビタミンDサプリメントは人のカルシウムおよびリンのレベルを向上させることができるため、十分なマグネシウムがない状態だと、血管の石灰化へとつながりかねないのです。 [2]
事実、骨の健康に関しては、マグネシウムは独立した役割を担っています。マグネシウムが、この日照ビタミンの正しい吸収および活用に役立つことは事実です。しかし複数の研究では、マグネシウムは別のメカニズムを採用して、骨の健康を維持し、さらには高齢者における骨折リスクまでをも予防することが示されています。
体内の半分以上のマグネシウムは骨組織に蓄えられたまま残ります。これはマグネシウムが骨形成に直接関与していることを考えると、理にかなっています。これは、骨を作る特異性細胞である骨芽細胞の活性を増加させます。
また、マグネシウムは体内のカルシウムレベルを調節します。血流中のカルシウムレベルが上昇すると、マグネシウムは甲状腺を刺激しカルシトニンを放出します。これは骨の構造との統合性を維持するホルモンです。カルシトニンの役目は、血液や軟組織から余分なカルシウムを抽出し、それを再度骨へ送ることです。これは骨密度の向上に役立ちます。こういった部分にカルシウムが過剰に蓄積されると、関節炎や骨粗しょう症につながります。
ニュートリエンツ(Nutrients)で2013年に発表された研究は、以下のように説明しています。「マグネシウム不足は、結晶形成、骨細胞に作用し、骨粗しょう症に直接影響をおよぼす。また、副甲状腺ホルモンの分泌と活動に強く影響を与え、低悪性度の炎症を促進することで、間接的に影響をおよぼす。概して、マグネシウム恒常性の維持は骨統合性の維持に役立つことを示している。」[3]
事実、動脈やその他の血管といった軟組織でのカルシウム蓄積は、アテローム性動脈硬化症(動脈でのプラークの蓄積が、やがて動脈の肥厚および狭窄を起こし、血餅、心臓発作、狭心痛、脳卒中などのリスクを増加させる症状)の発症など、不当な副作用へとつながる恐れがあります。同様に腸および腎臓におけるカルシウムの大量蓄積は、便秘や腎臓結石を引き起こすことがあります。
では、ビタミンDを大量に摂取した場合のシナリオを想像してみましょう。このビタミンDをより使える形に変換し、正しく吸収するために、マグネシウムが必要になります。しかしマグネシウムレベルが低かったらどうなるのか?体はマグネシウムが蓄積されている場所からそれを抜き取ります。その場所とはどこでしょうか?筋肉と骨です。すなわち、体は骨、歯、筋肉から蓄積されているマグネシウムを抜き取るため、さらにマグネシウムレベルを枯渇させます。その際、筋肉痛、筋けいれん、けいれん、振戦などを体験し始めます。中には不安、頻拍、頭痛、不眠症、便秘などを感じる方もいます。これらは体がさらなるマグネシウムを必要としている徴候です。言い換えるならば、マグネシウム不足を起こしているのです。
ここで何が起こっているのかお気づきでしたか?まずビタミンDを大量に摂取した際に、既に蓄えられているマグネシウムのほとんどはすぐに使い尽くされてしまいます。一方で、十分なマグネシウムなしにはビタミンDを使うことはできません。
2017年の研究では、マグネシウムレベルの低い高齢の男性は骨折リスクが高いことが分かっています。そして、以下のように結論しています。「低血清マグネシウム濃度は、中年白人男性において、全体および大腿骨骨折のリスク増加に単独で関連している。女性および他の個体においてこれらの結果を再現するとともに、骨折予防における血清マグネシウムの潜在的な関連性を評価するために、さらなる調査が必要である。」 [4]
要約:
- 不活性型ビタミンDを活性型へと変換するためにマグネシウムが必要になり、そうすることで細胞がビタミンDを活用することができる。健康なレベルのマグネシウムなしでは、ビタミンDは不活性型で利用できないまま残ってしまう。
- 肝臓および腎臓のビタミンD代謝に関与するほとんどすべての酵素を活性化するためにマグネシウムが必要。
ビタミンDの全体的な健康効果
数多くの信頼のおける調査が、ビタミンDの役割は骨と筋肉の健康のみに留まらないと示唆しています。体のほとんどすべての細胞がビタミンD受容体を有しています。それには免疫系、心臓、脳、腸、肺、甲状腺などの細胞も含まれています。これはすなわち、心臓、脳、甲状腺、免疫系の健康維持において、ビタミンDは重要な役割を果たしているということです。
ビタミンD:
- 丈夫な骨作り、および骨粗しょう症リスクの軽減に役立つ
- 炎症の軽減
- 自然免疫を高め、インフルエンザやその他の気道感染症といった感染症リスクを軽減
- アレルギー、喘息、炎症性皮膚障害リスクの軽減
- 甲状腺障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患を含む自己免疫障害リスクを軽減
- 子供の自閉症リスクを軽減する可能性がある
- 心臓の健康をサポートし、動脈石灰化、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患(PAD)、脳卒中、心臓発作などのリスクを軽減
- エネルギーレベルの向上
低ビタミンDレベルは、妊娠を計画中、および妊娠中の女性にとって良い知らせではありません。ビタミンD不足は、流産、妊娠糖尿病の発症、子癇前症、低体重児出産などのリスク増加と関与しています。事実、妊婦の低ビタミンDレベルは、新生児の喘息、喘鳴障害、肥満リスクを増加させることが分かっています。
ではマグネシウムはどう関係しているのか?
カルシウム、カリウム、ナトリウムに次いで、体が持つ4番目に豊富なミネラルがマグネシウムです。この記事の冒頭でも言及したように、マグネシウムは体内の多くの生化学反応を活性化し、それぞれ健康な細胞および器官機能には欠かせません。
マグネシウムは以下に必要です。
- カルシウムレベルの調節
- RNA(リボ核酸)およびDNA合成
- DNA修復
- (抗酸化物質の母である)グルタチオンの生成
- 数多くの輸送体および酵素の活性化
- デトックス(解毒)
- 体の抗酸化状態の向上、およびフリーラジカルによる酸化損傷の軽減
- ビタミンDおよびB6をより細胞が使える形にする
- さまざまなホルモンと神経伝達物質の調節
複数の研究は、マグネシウムレベルの向上は以下に効果的であることを示しています。
- 筋けいれん
- 心不全および心臓疾患
- アテローム性動脈硬化症
- 子癇前症および早期分娩
- 線維筋痛症および慢性疲労
- 月経前症候群(PMS)
- 放射線被曝
- 睡眠不足および気分不全
- 高いストレスレベル
- 骨粗しょう症
- 聴力損失および耳鳴り
- 喘息
過去数十年間で、一般の人々の間で食物マグネシウムの摂取量が大幅に減少したという事実があります。農薬の過剰使用に依存している現代の農業文化が、土壌のマグネシウムレベルの低下を招きました。これはやがて土壌で育つ作物に行きわたるため、今やこれらの作物はより栄養素を欠いてしまっています。加工食品(精粉、脂肪、砂糖、防腐剤が多く含まれている食品)に依存しすぎている人もまた、マグネシウム不足です。
消化管の状態が悪かったり、クローン病、セリアック病といった症状は腸におけるマグネシウムの吸収障害へとつながることがあり、レベル低下や欠乏を引き起こします。慢性的なストレス、感染症、抗生物質などもマグネシウムを消耗させます。
いかにしてマグネシウム不足を解消するか?
ほとんどのナッツ類および種、ブロッコリー、卵黄、緑葉野菜、全粒穀物など、マグネシウムが豊富に含まれている食品の摂取を増やしましょう。また、マグネシウムサプリメントの摂取も良いでしょう。
粉末や錠剤の形でマグネシウムを径口摂取していますか?膨満感、下痢、腹部けいれんといった症状を経験する可能性があるかもしれません。マグネシウムオイルスプレーを使うか、もしくはリポソームマグネシウムサプリメントを摂取することで、これを防ぐことができます。
マグネシウムオイルスプレーを肌に吹きかけることができます。これは、副作用なしでマグネシウムレベルを効果的に高めることができます。マグネシウム不足を解消するもう一つの方法は、高品質のリポソームサプリメントを摂取することで、これは細胞と組織に到達するミネラル量の増加に役立ちます。リポソームサプリメントは、細胞による栄養素のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)と吸収の向上にとても効果的です。
そして覚えておいていただきたいのが、マグネシウムレベルが健康な範囲内になければ、ビタミンDサプリメントも無意味になってしまうということです。難しいのは、血液検査をしただけではマグネシウム不足は診断できないのです。なぜなら、ほとんどのマグネシウムは筋肉と骨に蓄積されているためです。具体的に言えば、体全体のマグネシウムの内40%は細胞内に存在し、残り60%は骨と歯に存在しています。わずか1%未満のマグネシウムだけが血流を循環してており、そのため血液検査のみでは欠乏を検出することは困難なのです。
特にあなたがビタミンDサプリメントを摂取している場合、マグネシウムレベルを維持するこは重要です。そしてビタミンK2も、このカルシウム-ビタミンD-マグネシウム方程式全体において重要な役割を担っているということを忘れてはなりません。ビタミンK2もまた、過小評価されている栄養素の一つです。しかし、カルシウムレベルを調節するためにビタミンK2およびD3が共に機能しているということは、必ず知っておいてください。カルシウムを吸収し、体内におけるレベルを向上させるためにビタミンDを必要としている一方で、ビタミンK2はこのカルシウムを骨へと導き、同時に軟組織からは遠ざけます(さまざまな健康問題を引き起こしかねないため)。したがって、健康な骨と健康な心臓のために、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンK2の健康的なバランスが必要なのです。多くの人が信じているのと異なり、問題なのはカルシウムではなく、過剰な石灰化および関連する健康問題を引き起こす、他の栄養素の不均衡こそがむしろ問題であることは明白です。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Uwitonze et al. Role of Magnesium in Vitamin D Activation and Function. The Journal of the American Osteopathic Association. 2018
- American Osteopathic Association. "Low magnesium levels make vitamin D ineffective: Up to 50 percent of US population is magnesium deficient." ScienceDaily. 2018.
- Castiglioni et al. Magnesium and osteoporosis: current state of knowledge and future research directions. Nutrients. 2013.
- Kunutsor et al. Low serum magnesium levels are associated with increased risk of fractures: a long-term prospective cohort study. European Journal of Epidemiology. 2017
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