ビタミンB12を含む食物源。これだけで十分? (SQ-110)
ビタミンB12はあらゆる意味でユニークなビタミンです。これは、必須微量ミネラルであるコバルトを含む唯一のビタミンです。ビタミンB12の必須量は僅か(他のビタミンよりも少量)ではありますが、新鮮な食物や野菜を多く食べても一日の必要量には届きません。それはこのビタミンが卵、乳製品、肉、魚といった動物性食品にのみ含まれているためです。
ビタミンB12は非常に重要なビタミンで、不足すれば健康への影響は広範囲に及びます。深刻な不足が長期にわたった場合、神経系が取り返しのつかない損傷を受けることもあります。
この記事では、最も優れたビタミンB12を含む食物源や、時に補給が必要である理由などをご紹介したいと思います。
ビタミンB12の役割
ビタミンB12は多くの重要な機能をもっており、以下に必要になります。
- 健康で成熟した赤血球の形成
- エネルギー生成(ビタミンB12は脂肪、タンパク質、炭水化物の代謝に関与している)。
- DNA合成
- 健康な神経系および脳機能
- 血液からのホモシステイン除去(ホモシステインは動脈に損傷を与えることで知られるタンパク質であり、心臓疾患と関係している)。
- 葉酸の再生
ビタミンB12を含む最も優れた食物源は?
ビタミンB12は動物性食品にのみ含まれています。植物由来の食品にこの必須ビタミンは含まれていません。海藻にもビタミンB12が含まれている品種(海苔など)はありますが、一日の必要量を満たすには十分ではありません。
しかし興味深いことに、動物は自身でビタミンB12を作り出さないのです。実はこれは動物の消化管にいる微生物によって生成されます。ヒトの腸に存在する細菌もビタミンB12を作る事ができますが、体はこのビタミンをあまり利用することができないと、専門家は主張しています。
以下はビタミンB12を含む食物源の一覧です。
- 肝臓、腎臓などの内臓肉
- 牛肉
- 卵
- 鮭、マスなどの魚
- 貝
- 牛乳および乳製品
- 強化乾燥酵母
- 強化穀物
食事から十分なビタミンB12を摂取していますか?
肉、卵、魚、乳製品を多く食べていますか?これらの食品にはたくさんのビタミンB12が含まれています。しかし、食生活だけでは十分な量を摂取できていないかもしれません。なぜならビタミンB12は簡単に体に吸収されないためです。最終的に吸収されるまでに多くの工程を経ますが、これらの工程に関する問題は代謝に悪影響を及ぼします。
ビタミンB12の吸収における重要な点を見ていきましょう。
- ビタミンB12を含む食品にビタミンB12は遊離型で存在しておらず、タンパク質と結合している。
- 消化中に胃の中の酸と(酵素の一種である)ペプシンがこれらのタンパク質を分解し、ビタミンB12を切り離す。
- 切り離されたビタミンB12は胃で生成される特別な輸送タンパク質である内因子と結合する。
- 小腸は内因子の受容体を有している。これらの受容体が内因子とB12の複合体と結合し、ビタミンB12は吸収される。
効果的なビタミンB12の吸収にはカルシウムも必要
内因子が小腸にある受容体と結合できるのは、カルシウムが健康的なレベルにある時のみです。カルシウムが不足していると体はビタミンB12を吸収することができません。
調査によって、糖尿病の治療に使用される薬、メトホルミンの長期使用がビタミンB12不足を引き起こすことが示されました。これは、メトホルミンが腸のカルシウムレベルを下げるためです。メトホルミンは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療に最も一般的に使用される薬です。
2016年、ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズムに発表されたとある研究では、メトホルミンの長期使用がビタミンB12不足および貧血を引き起こす可能性があることがわかりました。同研究は医師に対し、メトホルミンを使用している患者にビタミンB12レベルの定期検査を行うことを推奨しています。 [1]
ビタミンB12とカルシウムを共に摂取することで、メトホルミンによるビタミンB12不足を解消できる可能性があるのです。
あなたもビタミンB12不足かも?
年齢、健康状態、特定の薬物治療などは、体が持つ十分な量の酸、内因子、酵素を作り出す能力を弱化します。これらは健康的で効率的な吸収に関与しています。これはビタミンB12の吸収不良をもたらし、B12不足へと繋がります。以下は体のビタミンB12吸収能力に影響を与えるものの一覧です。
- 年齢
- 萎縮性胃炎、胃壁が薄くなる。この症状は、内因子の分泌を軽減する。
- 胃食道逆流疾患(GERD)および消化性潰瘍を治療する薬の長期使用。これにはH2ブロッカーおよびプロトンポンプ阻害薬も含まれる。
- 悪性貧血(自己免疫障害の一種で、免疫系が内因子を生成する細胞を殺してしまう)。
- 減量手術および胃、小腸の一部を切除する手術
- クローン病、大腸炎、セリアック病、リーキーガット症候群、細菌の異常増殖といった症状
- 糖尿病などの症状
- 膵障害
- メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子変異
- アルコールの過剰摂取。これは胃壁に炎症を起こし、内因子の生成に影響を与えるだけでなく、肝臓にも損傷を与える。ビタミンB12のほとんどは肝臓に貯蔵されているため、これは非常に重要。
- 甲状腺機能亢進症、狼瘡(ループス)などの自己免疫障害
- 便秘薬の長期使用
- 妊娠
ビタミンB12不足の徴候
ビタミンB12不足は発症までに多少時間がかかります。これは他のビタミンと違い、体がビタミンB12を3~5年貯蔵できるためです。欠乏と診断されずにB12が不足したままでいると、取り返しのつかない損傷が生じます。
以下の症状はビタミンB12不足を示唆しています。
- 貧血
- 長引く脱力感や疲労
- 手足の痺れや疼き、記憶力の低下、ブレイン・フォグ(脳機能の低下)、うつ病、偏執病、行動の変化、頭痛、バランスが維持できないなど、様々な神経障害
- 便秘、下痢を含む消化管の問題
- 食欲不振
- 舌が赤くなり腫れる
- 口の痛み
- 蒼白
- 反射低下
- 認知症や精神分裂病のような症状
- 失禁
イギリスの国民保険サービス(NHS) によれば、ビタミンB12不足は一時的な不妊症を引き起こすこともありますが、これは通常B12を補給することで改善されます。
赤ちゃんを健康に育てるために葉酸が重要であることは、既に多くの方がご存知かと思います。赤ちゃんの脊柱が正常に発達しない症状である脊椎披裂など、神経管欠損症リスクを予防するために、妊娠を計画中、または妊娠初期のほとんどの女性は葉酸を摂取しています。しかし、赤ちゃんの神経管欠損症および他の神経欠損症を予防するためにビタミンB12も必要であることは、多くの方はご存知ないでしょう。
妊娠中のビタミンB12不足は、早産とも関係しています。2017年に行われた研究で以下のことが判明しました。「母親の低ビタミンB12レベルは高い早産リスクと関連しており、妊娠中にビタミンB12が不足することで早産リスクは特に高くなる。」 [2]
妊娠女性の低ビタミンB12レベルは、新生児の低B12レベルも引き起こします。厳格なベジタリアン、または悪性貧血と診断されていない母親の母乳のみによって育てられた幼児もまた、不足している可能性が高いです。これによって幼児に嘔吐、成長障害、異常運動、発育遅延などが生じることがあります。
ビタミンB12サプリメントの摂取
ビタミンB12サプリメントは、B12不足のリスクが高い方に役立ちます。ベジタリアンの方はB12を十分に摂取できていない可能性があるため、B12栄養強化食品やB12サプリメントを摂取して、健康的なレベルを必ず維持しなければなりません。また妊娠中、授乳中の女性も、赤ちゃんのB12不足を回避し、さらに成長と発育をサポートするためにB12サプリメントを摂取しなければなりません。
食品の場合、ビタミンB12はタンパク質と結合しており、切り離される必要があります。この場合、B12を自由にするために胃酸と酵素の健康的な生成が必要です。しかしサプリメントの場合、ビタミンB12は遊離型で既に使用可能な状態にあります。このため、メトホルミンや胃酸を軽減させるその他の薬を摂取している年配の方にとってビタミンB12サプリメントの摂取は効果があるのです。
悪性貧血を患っている方
悪性貧血の場合、最適なB12吸収環境に必要な内因子を体は作り出せない状態にあります。この症状にある人には、B12が豊富に含まれている食品やサプリメントは効果的ではありません。セリアック病やクローン病を患っている方も、経口サプリメントによるビタミンB12の吸収に問題がある可能性があります。この場合、医者は筋肉注射を勧めることが多いでしょう。
レベルの増加には経口サプリメントよりも筋肉注射の方が効果があると一般的には信じられているのです。しかしこれは真実ではありません。ビタミンB12状態の改善において、B12経口サプリメントは筋肉注射と同様の効果があるのです(上記に挙げた特定の症状の場合を除いて)。特にリポソームサプリメントはこの点において非常に話題になっており、素晴らしい補給の代替方法です。
リポソームビタミンB12サプリメントは消化管を通らず血流に直接運ばれ、吸収とバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を向上させます。
ビタミンB12 と葉酸
ビタミンB12は葉酸と非常に密に連携して、その様々な役割を果たします。また、葉酸を体が積極的に使用できる形に変換するためにもビタミンB12は必要です。同様に、葉酸が足りないとビタミンB12の加工、活用が出来ません。
よくある質問に「葉酸と葉酸塩は別のものなのか?」というのがあります。これらはどちらも同じビタミン(B9)の名前です。葉酸塩が食品の中に自然に存在している一方、葉酸は合成のもので、サプリメントや栄養強化食品に含まれています。ひよこ豆、ブロッコリー、葉物野菜、えんどう豆などは葉酸塩が豊富に含まれている食品の一例です。
一日に1 mg以上の葉酸を摂取することで、ビタミンB12不足が引き起こす症状を抑えることができます。この場合、疲労などB12不足の一般的な徴候は出ませんが、不足は改善されていないため引き続き神経系に損傷を与えます。根本的な不足に気づかずに長期間経ってしまうと、取り返しのつかない損傷を引き起こすこともあります。ビタミンB12と共に、葉酸を正しい用量摂取するのが良いでしょう。ビタミンB9を葉酸塩の形態で摂取できればなお良いです。医療専門家に必ず相談をしましょう(妊娠中の場合は特に)。
MTHFR遺伝子変異についてもご紹介する良い機会でしょう。メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)は、同名の酵素を作り出すよう体に伝える遺伝子の一種です。この酵素は多くのアミノ酸の加工に関与しています。
これは葉酸をメチル化反応に必要な活性型に変換します。メチル化反応によってメチル基がタンパク質、酵素、DNA、様々な神経伝達物質などに加えられます。これらの反応は体の全細胞で行われます。(葉酸とビタミンB12の組み合わせは、タンパク質の代謝においてビタミンCによってサポートされています)。遺伝子の突然変異が起こると、体が使えない形で葉酸塩が過剰に蓄積されます。
具体的に説明すると、葉酸塩とビタミンB12は共に有毒ホモシステインをメチオニンに変換するのに役立ちます。メチオニンはメチル化反応において重要な役割を担っています。これらの反応は以下に重要となります。
- 赤血球の形成、DNAの合成と修復
- ホモシステインレベルの調節
- デトックス(解毒)に役立つマスター抗酸化物質である、グルタチオンの合成
- 神経を損傷から保護する覆いの役割を持つ、ミエリン鞘の合成および再生
- ノルエピネフリン、ドーパミン、セロトニンといった重要な神経伝達物質の生成。これらのホルモンは気分や記憶の調節に関与している。
- エストロゲンなどのホルモンのプロセス
MTHFR遺伝子の突然変異はこれら重要な工程を妨げ、血中の異常な高ホモシステインレベル、低ビタミンB12レベル、デトックスができなくなる、などの症状を引き起こします。血中の高ホモシステインレベルは、炎症や心臓疾患を引き起こすことでも知られています。
またMTHFR遺伝子変異はうつ病、双極性障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)を含む多くの精神疾患と関連しています。さらに心臓疾患、脳卒中、骨粗しょう症、特定の種類のがんや、甲状腺疾患を含む自己免疫障害などのリスクも増加させます。
ビタミンB12の過剰摂取が心配ですか?
B12の安全な摂取に関して、上限は制定されていません。これは、多量に摂取をしたとしてもまったく安全なビタミンなのです。全年齢のベジタリアンの方、50歳以上の方、妊娠中および授乳中の女性、炎症性腸疾患や腸の手術をされた方、制酸剤やメトホルミンを摂取している方は、すぐさま医療専門家に相談をし、B12レベルをチェックしたうえで、状況に応じて補給を行わなければなりません。悪性貧血の方、またはクローン病やセリアック病を患っている方は、筋肉注射の方が効果がある可能性があるので、覚えておいて下さい。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Aroda et al. Long-term Metformin Use and Vitamin B12 Deficiency in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study. J Clin Endocrinol Metab. 2016
- Rogne et al. Associations of Maternal Vitamin B12 Concentration in Pregnancy With the Risks of Preterm Birth and Low Birth Weight: A Systematic Review and Meta-Analysis of Individual Participant Data. American Journal of Epidemiology. 2017
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