体内のpHバランスを維持する重要性 (SQ-103)
疲労、風邪にかかりやすい、筋肉痛、気分の変動が激しい、ホルモンの問題。思い当たる節がありますか?この内のいくつか、またはこれらすべての症状のせいで、常に疲れを感じていませんか?
もし自分の体が最大限に機能していないと感じるのであれば、体のpHバランスがおかしい可能性があります。これは従来の医者のほとんどが重要視しておらず、考慮に入れることすらしません。しかし実際には、体は非常に繊細なpHバランス(酸アルカリ平衡)を維持しており、これはすべての細胞、酵素、細菌において重要なのです。体は正常に機能するために、正しいpHバランスが必要です。そしてここで起こる異常は、あまり馴染みのない様々な形で、健康に影響を与える可能性があります。
pHとは?
pH値とは液体の酸性またはアルカリ性の度合いのことを指しています。0から14の目盛で測定され、溶液のpHレベルが7以下の場合は酸性、7以上のものはアルカリ性となります。例えば、胃壁から放出される塩酸のpH値は1です(強い酸性)。
少しだけ科学的に説明すると、pH値は溶液内の水素イオンの量によって定義されます。高濃度の水素イオンを含む液体または溶液は、低pHまたは高い酸性を有すると考えられます。同様に、低濃度の水素イオンを含む液体は、高pHまたは高いアルカリ性を有しています。
異なる体の部位の異なるpHレベル
pHレベルは体全体で一貫していません。その理由はとても簡単です。すべての細胞、酵素、組織は同じpHで機能していないためです。それぞれが異なる機能をもっており、その機能を果たすためには特定のpH領域が必要なのです。いくつかの例を簡単に見てみましょう。
肌は約5.5のpHレベルを維持しています。少しだけ酸性に寄っており、これは肌がその環境にいる病原菌と闘う手助けをします。一方で唾液のpHは大体6.5~7.4です。やや中性なこのpHは、唾液の酵素が正常に機能するために重要となります。
消化管の範囲は1.5~7.0と、最も興味深く、変動の激しいpH値を示しています。タンパク質の消化に必要なペプシンなど、消化酵素が正常に機能するために胃の中は少し酸性寄りの状態であることが必要です。ペプシンはタンパク質を小さなペプチドに分解し、機能するためには低pHが必要です。食べ物が胃から小腸へ移動すると状況は変わり、pHレベルが増加します。同様に、これは小腸で働く酵素が活性し、正常に機能するために、アルカリ性環境が必要なためです。
体は血液のpHレベルを、アルカリ性寄りの7.34~7.45という狭い範囲に維持するために休みなく働いています。ほんの僅かな偏差であっても、健康に深刻な問題を引き起こす可能性があるのです。
体はいかにしてpHバランスを維持するのか?
体は、バランスを生み出す、または問題が起こった場合に失ったバランスを回復させる方法を知っている、優れた機械を持っています。そしてpHバランスを調節するとなると、そのために体は数々のメカニズムを用います。
例えば、完全な酸アルカリ平衡を保持するために、体は蓄えてあるミネラルを活用します。マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウムといったミネラルはアルカリ性で、体が直面する酸度の増加に対して優れた緩衝剤を与えます。ミネラルが豊富な食事を食べることで、通常、酸アルカリ平衡は容易に維持されます。しかしこれは理想的な状況にすぎません。現実世界では、私たちの食生活はこれらのミネラルが不足しており、健康やエネルギーレベルを維持するために必要なその他の栄養素も不足しています。
呼吸系および腎臓系もpHレベルの調節に役立ちます。例えば、息を吐くとき肺から二酸化炭素を排出します。これはやや酸性です。血液中の二酸化炭素の蓄積は血液pHを増加させ、呼吸性アシドーシス(酸血症)をもたらします。肺障害、喘息、胸部の怪我、肥満などはこの種類のアシドーシスを引き起こすことがあります。素早く深く呼吸をすることで、過剰な二酸化炭素の除去に役立ち、血液のpHを調節することができます。 同様に、腎臓は、必要に応じて過剰な酸を除去または維持する能力を有しています。腎臓は尿を介して過剰な酸を放出し、一方で重炭酸塩を維持して過剰な毒素を相殺します。腎臓が毒素または酸を除去できないと、代謝性アシドーシスを引き起こすことがあります。
他にもpH調節メカニズムがあります。体は自然に存在する酸および塩基を有しています。これは化学緩衝系と呼ばれ、pHの急激な変化に対して保護します。最も重要な緩衝系の一つが、重炭酸塩緩衝系です。
したがって、ミネラル、肺、腎臓、そして様々な緩衝系は、体の液体および組織の健康的なpHバランスを維持するために連携して機能し、アシドーシスや疾患を予防します。
不均衡があると何が起こるのか?
健康におけるpHの役割は非常に複雑です。この分野の専門家たちは、大体7.0~7.4の、わずかにアルカリ性寄りの状態を維持することが必要だと述べています。それはなぜでしょうか?
酵素は活性・安定し、その機能を果たすために完全なpH領域を必要とします。これは、細胞内で行われる無数の生化学反応を促進しスピードアップさせます。これらの化学反応のおかげで私たちは生きていられるのです。これらの生命維持プロセスには、エネルギーの生産、毒素や代謝老廃物の除去、栄養素の消化・吸収、タンパク質・ホルモン合成、脂肪燃焼などが含まれています。わずかなpHの不均衡でも、酵素や細胞の機能に悪影響をおよぼす可能性があり、これらすべての機能は大きく損なわれます。
さらに、アシドーシスは細胞レベルにおける酸素不足をもたらします。これはすなわち、細胞に送られる酸素が少ないということです。これは後に嫌気性環境を生み出し、カンジダ菌、細菌、ウイルス、さらにはがん細胞の増殖につながります。複数の研究が、がん細胞は酸性環境で増殖・成長することを示しています。
pH障害がどのようにして様々な構体系に影響を及ぼし、本当の健康問題を引き起こすのかを見てみましょう。
体が酸性状態になったら何が起こるのでしょう?
体は酸の蓄積に対抗するために、「ミネラルの貯蔵場」にアクセスする必要が出てきます。体は、血流中に十分なミネラルがない場合、何をしなければならないのかを分かっています。骨、歯、筋肉、その他の組織といった、ミネラルが主に貯蔵されている場所から抜き取ることを余儀なくされます。これは生命維持行動ですが、やがて健康全体に付けが回り、免疫、ホルモン、体重、肌、エネルギーレベル、骨の健康などに大きな損害を与えます。
骨の健康不良:体が酸性の時の最も分かりやすい徴候は、関節痛と骨の健康不良です。先ほども述べた通り、これは過剰な酸を相殺するのに、体が骨からミネラルを抽出しているためです。(カルシウムやマグネシウムといった)ミネラルの継続的な枯渇は、骨を弱くさせ、骨粗しょう症を引き起こします。残念ながら、慢性的なミネラル不足と、組織における酸の蓄積も骨関節炎を引き起こす可能性があります。
栄養不足:アシドーシスは、食べ物から栄養を吸収する体の能力を損なわせます。これは、体のミネラル不足を引き起こし、痛みを伴う筋けいれん、免疫不全、乾燥肌、脆弱爪、乾燥髪、薄毛などをもたらします。
免疫不全:酸性領域におけるpHも、免疫系の機能に影響を与える可能性があります。酸性環境が白血球の生成を低下させていると考えられています。また、これは白血球の活性および動きも軽減させ、病原体を破壊するその能力を台無しにし、ウイルスと細菌に乗っ取られやすくなります。事実、がん細胞、ウイルス、細菌のすべては、酸性・低酸素環境において増殖する傾向にあると複数の研究が示しています。一方で、アルカリ性状態は病気や感染症に強いです。
体重増加:通常、体はpHレベルの調節方法を知っています。肌、肺、腸、腎臓を介して酸や毒素を除去します。しかし、除去できない程の量の酸が蓄積されていたら何がおこるのでしょうか?体は脂肪貯蔵細胞を生み出し、これらの過剰な酸を保管します。従って、健康なpHレベルを維持することは、減量および体重を増加させないようにするために、全体的な戦略における重要な要素になるのです。
デトックス能力の低下:まず、pHの不均衡はミネラル不足を引き起こすことがあります。そして、ミネラルは毒素や重金属を除去する上でとても重要な役割りを担っています。もしこれらを体から正常に除去できないと、組織に蓄積され、感染症、風邪、喘息、気管支炎、腎臓結石、エネルギーレベル不足、免疫の脆弱化、その他多くの問題を引き起こします。簡単に言ってしまえば、「故障中」のpHバランスは、細胞による毒素やその他の細胞老廃物の排除に影響を及ぼし、さらなる酸性・炎症を生み出すので、体をより病的な状態に押しやります。
ホルモンの問題:範囲外の血液pHは、特にホルモンの健康にとってよくありません。甲状腺ホルモン、副腎ホルモン、エストロゲンホルモンのレベルに影響を与えます。例えば、酸のバランスの乱れは、体のコルチゾールのレベルを上昇させます。これは、糖尿病、心臓疾患、うつ病などと関連しているストレスホルモンの一種です。 低pH、または高酸性状態も、不活性型甲状腺ホルモン(T4)から活性型甲状腺ホルモン(T3)への変換に干渉します。また、T3ホルモンを吸収する細胞の能力を損なわせ、甲状腺機能障害を引き起こします。この効果は、酸によって生じる栄養不足によるものの可能性があります。甲状腺の健康を最適に保つために、亜鉛、セレン、マグネシウム、ビタミンB群といったミネラルやビタミンが必要です。これは、酸アルカリ平衡が狂うと突如として健康問題に直面してしまうもう一つの理由です。ホルモンの不均衡は体重増加、高血圧、高血糖値、うつ病、気分変動、低エネルギーなど…この他多くの症状につながります。
炎症:アシドーシスは多方面において体にストレスを与えます。フリーラジカルの生成を向上させ、炎症性環境を生み出し、細胞や組織を損傷して早期老化を引き起こします。2013年のとある研究は、以下のように報告をしています。「低pHは、アテローム性動脈硬化症、虚血後の炎症反応といった、アシドーシス関連の病状における炎症の要因になっている可能性がある。」 [1]
インスリン抵抗性および心臓疾患リスク:ミネラル不足を伴った高酸性は、アテローム性動脈硬化症につながる可能性があります。これは動脈内にプラークが蓄積されることで、動脈が硬く、厚くなる症状です。 この研究によると、わずかな代謝性アシドーシスでさえも、筋細胞にインスリン作用に対する耐性を作り(インスリンは細胞がグルコース(ブドウ糖)を吸収・活用するのに役立つ)、心血管疾患、高血圧、糖尿病、腎臓結石などのリスクを向上させる、と報告しています。 [2] さらに2018年のとある研究では、質の悪い食生活によって酸性が向上すると、インスリン感受性が損なわれ、糖尿病リスクが向上することが分かりました。 [3]
エネルギー流出:pHレベルが狂うと、細胞機能全体が大打撃をくらいます。これには代謝も含まれ、エネルギー生産の低下につながります。さらに、栄養不足はこの問題をさらに悪化させます。マグネシウムといったミネラルは体内のエネルギー生産において重要な役割を担っています。ミネラル不足は、細胞レベルでのエネルギーレベル不足を引き起こします。エネルギーの損失は神経系の健康にも作用し、精神的、感情的な影響を与えます。
要するに、pHの調子が狂うと多くの問題を引き起こすのです。栄養不足、細胞レベルでの酸素不足、デトックスができない、ホルモンの問題などを引き起こします。結果として、細胞は最高のパフォーマンスを発揮することができず、炎症や病気へとつながります。事実、複数の研究が、食餌誘発性アシドーシス(酸性の食事によって引き起こされる酸性増加)は、がんリスクを高める細胞活動を変える可能性があることを示しています。
以下は、体内のアシドーシスを示す徴候と症状です。
- エネルギーの低下および持続する疲労
- 頻繁な風邪およびアレルギー
- 脱水症状
- 細菌性膣炎および酵母感染症
- 粘液の生成
- 関節痛、筋けいれん
- 皮膚発疹
- 呑酸、消化不良
- 頭痛
- 水分貯留
- 口臭
- 脆弱爪
- 舌のぶつぶつ
- 呼吸困難
体の過剰酸性を引き起こすものはなにか?
不健康な食生活、ストレス、運動不足はアシドーシスを促進する重要な要因です。他にも、繊細なpHバランスを混乱させ、体を酷使させる可能性のある状態があります。
- 腎機能障害
- 怒りやストレスといったネガティブな感情
- 抗生物質および薬の過剰摂取
- 座ってばかりいる生活
- 毒素や化学物質への長期暴露
- 精製食品・加工食品の消費
- アルコール乱用
- 砂糖および動物性脂肪の過剰使用
- 慢性的、および重い病気
私たちの多くがこれらの要因に晒されていることが容易に考えられ、これによってより酸性に、炎症や病気によりなりやすい体になっています。自然療法家、および機能性医学の専門家たちは、この側面に取り組むことは、体の健康・エネルギー・全体のバランスを回復することへの手掛かりになると主張しています。
異常なpHは様々な方法で健康に影響を及ぼし、骨粗しょう症、胃炎、炎症、再発性感染症などにつながります。健康なpH値を持つ体は最高のパフォーマンスを発揮し、栄養素を吸収し、廃棄物を解毒し、さらに細菌やウイルスを増殖させない環境を生み出します。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Rajamäki et al. Extracellular acidosis is a novel danger signal alerting innate immunity via the NLRP3 inflammasome. Journal of Biological Chemistry. 2013.
- Adeva et al. “Diet-Induced Metabolic Acidosis.” Clinical Nutrition. 2011.
- Gæde J et al. Population-based studies of relationships between dietary acidity load, insulin resistance and incident diabetes in Danes. Nutr J. 2018
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