ビタミンDは慢性疼痛と線維筋痛症に有効なのか? (SQ-95)
頭痛、怪我の痛み、生理痛など、誰もが痛みを経験します。しかし慢性疼痛を患うことはまったく別の話になります。体内の激しく持続する痛みは、一般的に何かがおかしい時の兆候です。そして精神的、身体的、感情的な健康に被害を与えます。
広範囲慢性疼痛は、3か月以上にわたる痛みを伴う慢性症状です。これは、偏頭痛、関節リウマチ、腰痛、線維筋痛症といった、数多くの痛みを伴う消耗性状態を含む総称です。
線維筋痛症は、関節、筋肉、結合組織における広範囲慢性疼痛に特長されるような状態の一つであり、痛みを伴う圧力への反応を増加させます。診断に役立つその他の重要な症状には、説明できない極度の疲労、関節硬直(特に朝)、睡眠不足、過敏性大腸症候群、痛みを伴う生理、膀胱障害、不安、うつ病、手足のちくちくする感覚、頭痛などを含みます。物事を思い出す、集中する、飲み込むといった動作が難しなることもあります。
これらすべての症状は生活の質に影響をあたえます。これは、引きこもり、人間関係の問題、職場での業績不振などを招く可能性があります。さらに悪いことに、線維筋痛症には治療法がありません。痛み、睡眠不足、うつ病といった症状は通常、鎮痛剤、抗炎症剤、抗うつ剤など従来の薬で対処されます。しかし、これらの薬に依存することは、深刻な長期の副作用や依存症などにつながることがあります。
ますます多くの研究が、ビタミンDは、痛み、疲労、その他慢性疼痛や線維筋痛症に関連するの症状の軽減に効果的な可能性があることを示唆しています。ビタミンDが丈夫で健康な骨と健康な筋肉機能のために重要な栄養素であることは皆さんもご存知の通りです。その免疫の健康維持における役割はさらに注目を浴びてきています。では、ビタミンDは慢性疼痛や線維筋痛症管理の治療に使用できるのでしょうか?一緒に見ていきましょう。
慢性疼痛および線維筋痛症におけるビタミンD
複数の研究は、慢性疼痛症状や線維筋痛症を患っている方はビタミンD不足であることが多いことを示しています。 [1] [2] そして、リウマチ性疾患の国際学術誌で発表されたとある研究では、関節リウマチ(RA)に罹患している患者において、ビタミンD不足が神経因性疼痛の増加と関連していることが分かりました。 [3]
低ビタミンDレベルは、子供にはくる病を、大人には骨粗しょう症(弱く脆弱な骨)を引き起こすことがあります。深刻な長期間のビタミンD不足は、骨軟化症と呼ばれる、骨が軟らかくなる症状につながることがあります。骨粗しょう症と骨軟化症は共に骨を折れやすくします。
極度のビタミンD不足は、筋肉痛および筋力低下、脆弱骨および骨痛、高齢者における転倒リスクの増加、極度の疲労といったあらゆる症状につながることがあります。また、低ビタミンDレベルは、気分の問題、うつ病、集中力の問題などとも関連しています。慢性的なビタミンD不足と線維筋痛症の症状が一致していることが分かりますね。
これが、慢性疼痛または線維筋痛症の症状に苦しんている方はビタミンDレベルをチェックすべき理由です。特にあなたのビタミンDレベルが低い場合は、ビタミンD不足を補うだけで疲労や痛みを除去できることもあるのです。しかし、線維筋痛症および慢性疼痛はビタミンD不足だけが理由でなく、様々なアプローチでの対処が必要なこともあるので、注意してください。とは言うものの、ビタミンDは炎症や関連する痛みを引き起こす、体内の化学物質のレベルの軽減において重要な役割を果たしていると考えられており、線維筋痛症の症状軽減においても重要な役割を担っています。
研究から何が分かるか?
すべてではありませんが、線維筋痛症に関連する痛みやその他の症状における、この日照ビタミンの役割を調査したほとんどの研究で、低レベルの人においてではあるものの、ビタミンD補給が効果的になり得ることが確証されています。
2017年のメタ解析では、ビタミンDレベルが線維筋痛症発症の決定要因になり得ることが分かりました。そして、政策立案者はビタミンD補給をこの症状の予防戦略として使用することを考慮すべきです。 [4]
この2017年のメタ解析で、ビタミンD補給が痛みを軽減することが分かっています。 [5] 2016年にリウマチ性疾患の国際学術誌で発表された研究では、広範囲慢性疼痛の患者において、ビタミンD3を週に50,000IU、3か月間摂取することで、筋骨格系症状、うつ病、生活の質が改善したことが明らかにされました。 [6]
別の小規模なランダム化プラセボ対照試験でも、ビタミンDサプリメントはレベルの低い人の痛みを軽減し、朝の疲労症状を緩和することができると示唆されました。 [7]
この研究は、慢性腰痛(CLBP)患者におけるビタミンD補給の効果を調査しました。研究は、慢性腰痛を患っており、さらにビタミンD不足の者に対して週に60,000IUのビタミンD3サプリメントを8週間にわたって与えることで、痛みを軽減し、機能的能力を改善することができたと結論しました。 [8]
ビタミンDはどう役立つのか?
慢性疼痛および線維筋痛症の管理において、ビタミンDが厳密にどう役立つのかは僅かに分かっています。
健康な筋肉機能および強度を維持するためには、十分な量のビタミンDが必要です。さらに複数の研究は、ビタミンDはその抗炎症特性と免疫系を調節する能力により、線維筋痛症の症状を緩和することを示しています。同時に、この症状に冒された人は、外で過ごす時間が少ない傾向にあります。痛みや運動機能障害といった症状は、線維筋痛症患者が太陽の下を外出して、自然にビタミンDを得ることを困難にします。
感染症や怪我は組織の炎症性化学物質(サイトカイン)を活性化し、損傷を与えます。複数の研究者は、これが筋肉痛や関節痛の発症の説明になるのではないかと考えています。
複数の研究は、ビタミンDが痛みに関連するサイトカインの生成を下げ、T細胞反応を抑制することを示しています。この日照ビタミンは、炎症中における疼痛反応に関わる、プロスタグランジンE2の生成も抑制します。免疫細胞と炎症性化学物質に対するこれらのビタミンD効果は、体内の痛みおよび炎症軽減に役立ちます。
このランダム化二重盲検プラセボ対照研究は、筋骨格痛を持つ患者に対し僅か4,000IUのビタミンDが、痛みを軽減し、炎症および痛みを促進するサイトカインのレベル低下に効果的な可能性があると結論しました。 [9]
また複数の研究は、ビタミンDサプリメントと良い眠りによって、線維筋痛症、腰痛、筋骨格痛、関節リウマチといった慢性疼痛状態に役立つことができると示しています。痛みは睡眠障害を引き起こし、その後痛みや疲労といった症状を悪化させます。複数の研究は、ビタミンDは睡眠障害および慢性疼痛の両方に役立つことを示しています。
この2017年の研究は以下のように結論しています。「ビタミンD補給と良い睡眠衛生は、睡眠障害だけでなく、慢性疼痛状態の予防および治療においても、効果的な役割を果たしている可能性がある。」 [10] この研究は、ビタミンDは抗炎症反応を活性化させ、痛みに対する感度を低下させ、その後睡眠の質を改善すると示しています。さらに、睡眠衛生の維持は、睡眠問題の対処のみならず、痛覚感受性の軽減にも役立ちます。
しかしながら、ビタミンD不足だけでは線維筋痛症の発症の説明はつきません。ですが、先述の研究チームのリーダーである、ウェプナ―氏は以下のように示唆しています。 [7] 「ビタミンD補給は、線維筋痛症候群患者にとって比較的安全で経済的な治療法とみなすことができ、さらに高価な薬物治療だけでなく、身体的、行動的、集学的治療などに対しても、非常に費用対効果の高い代替薬および補助薬と見なすことができる。」 [11]
すべての研究が、特に十分なビタミンDレベルを有している人において、ビタミンDが慢性疼痛管理に効果的になり得るとは示していません。信頼できる結論を出すにはさらなるランダム化プラセボ対照研究が必要ですが、ほとんどの研究は「低ビタミンDレベルの患者(ここでは25-OHD <30 nmol/Lと定義する)は、補給の効果がある可能性が非常に高い」と結論しています。 [12]
ビタミンD不足とその他疾患のリスク
ビタミンD不足は骨の健康不良だけに関連しているわけではありません。心臓疾患、2型糖尿病、うつ病、自己免疫障害、感染症、肺疾患、呼吸器感染症、流産、および多くのガンの種類のリスク増加と関連しています。
新しいデータは、ビタミンDサプリメントは喘息症状の管理、および喘息の発作を誘発し悪化させることもある、急性気道感染症予防に非常に効果的な可能性があると示しています。これはビタミンDの抗炎症特性および、自然免疫を強化するその重要な役割によるものです。
一方で、過活動免疫系のバランス保持において中心的役割を果たす制御性T細胞の数および活性を増加させることで、適応免疫を調節します。制御性T細胞は、免疫系が外来侵入者と、体が持つ健康な細胞を区別するのを手助けします。不要な免疫反応は炎症につながり、自己免疫障害リスクを増加させます。
抗炎症特性は心臓疾患リスクの軽減にも役立ちます。酸化ストレス、およびアテローム性動脈硬化症発症の中心的役割を担っている炎症を軽減するだけでなく、ビタミンDは血管内の剛性を軽減し、血圧を下げ、内皮機能を向上させると考えられています。 [13] 事実ごく最近の研究で、ビタミンDは、アテローム性動脈硬化症、高血圧、糖尿病を含む多くの健康状態で観察される内皮損傷の回復において、大きな役割を果たしていることが分かりました。 [14]
これだけでなく、妊娠女性のビタミンD不足は、流産、子癇前症、妊娠糖尿病リスクの増加にも関連しています。母親の低ビタミンDレベルは、子供の早い時期およびその後の健康において影響をおよぼし、低出産体重、アレルギー、喘息、自閉症、さらには赤ちゃんの肥満リスクを増加させる可能性があります。数多くの研究が、健康なビタミンDレベルは、妊娠に苦労をしており、以前妊娠損失を経験している女性の流産リスクを軽減する可能性があることを示しています。 [15]
要するに、ビタミンDは今まで以上に重要な存在になってきているのです。以下のために、健康なビタミンDレベルが必要になります。
- 健康な骨の維持
- 筋肉の健康維持
- 気道感染症およびアレルギーを寄せ付けない
- 炎症の軽減
- 心臓の健康を守る
- 肺機能の維持
- 線維筋痛症を含む慢性疼痛状態の管理(特にビタミンDレベルが低い場合)
- 流産および子癇前症、妊娠糖尿病といったその他の有害事象リスクの軽減
- 過敏性大腸症候群や甲状腺といった自己免疫障害リスクの軽減
十分なビタミンDを摂取していますか?
太陽光をしっかりと浴びることはいつも効果がありますが、住まいが日の当たらない地域の場合、健康なレベルを維持するのは特に難しくなります。体はUVB(紫外線B波)の中で自身へのビタミンD供給を作り出すことができます。高所に住む人々はUVBに十分に暴露しないため、秋や冬にはビタミンDが不足することがよくあります。
さらに、食物源だけでは十分なビタミンDを摂取することは不可能です。近頃人々は太陽に曝されることを警戒しています。僅かな時間しか外で過ごさず、また日焼け止めを過度に使用することが、ビタミンD不足を広く引き起こしています。しかしながら、皮膚ガンになるリスクのある方が太陽への暴露を避けることは、もちろん賢明なことです。
ビタミンDサプリメントは、ビタミンD不足を解消し、慢性疼痛や線維筋痛症を含む数多くの慢性的な健康状態リスクを軽減するためには、安価で効果的な方法です。今すぐあなたのビタミンDレベルをチェックしてみましょう。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Okyay et al. Vitamin D levels in women with fibromyalgia and relationship between pain, tender point count and disease activity. Acta Med Mediterr. 2016
- Olama et al. Serum vitamin D level and bone mineral density in premenopausal Egyptian women with fibromyalgia. Rheumatol Int. 2013
- Yesil et al. Association between serum vitamin D levels and neuropathic pain in rheumatoid arthritis patients: A cross-sectional study. Int J Rheum Dis. 2017
- Makrani et al. Vitamin D and fibromyalgia: a meta-analysis. Korean J Pain. 2017
- Yong et al. Effect of vitamin D supplementation in chronic widespread pain: a systematic review and meta-analysis. Clin Rheumatol. 2017
- Yilmaz, R. et al. Efficacy of vitamin D replacement therapy on patients with chronic nonspecific widespread musculoskeletal pain with vitamin D deficiency. International Journal of Rheumatic Diseases, 2016.
- Wepner et al. Effects of vitamin D on patients with fibromyalgia syndrome: a randomized placebo-controlled trial. Pain. 2014
- Ghai B et al. Vitamin D supplementation in patients with chronic low back pain: an open label, single arm clinical trial. Pain Physician. 2017
- Gendelman et al. A randomized double-blind placebo-controlled study adding high dose vitamin D to analgesic regimens in patients with musculoskeletal pain. Lupus. 2015
- de Oliveira DL et al. The interfaces between vitamin D, sleep and pain. J Endocrinol. 2017
- Elsevier. "Vitamin D supplements reduce pain in fibromyalgia sufferers." ScienceDaily. 2014.
- Maria Helde-Frankling et al. Vitamin D in Pain Management. Int J Mol Sci. 2017
- Ioana Mozos, Otilia Marginean. Links between Vitamin D Deficiency and Cardiovascular Diseases. BioMed Research International. 2015
- Khan et al. Nanomedical studies of the restoration of nitric oxide/peroxynitrite balance in dysfunctional endothelium by 1,25-dihydroxy vitamin D3 – clinical implications for cardiovascular diseases. International Journal of Nanomedicine. 2018.
- Mumford, SL, et al. Association of preconception serum 25-hydroxyvitamin D concentrations with livebirth and pregnancy loss: a prospective cohort study. The Lancet Diabetes & Endocrinology. 2018
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