ビタミンDと眼の健康 (SQ-93)
ビタミンDは体のカルシウムとリンの吸収を促進し、骨や歯を健康に保ちます。この有名な役割に加えて、この日照ビタミンが免疫調節に積極的に関与していることを示す重要な証拠があるのです。したがって、さまざまな感染症と戦い、喘息やアレルギーの重篤度を軽減し、同時に自己免疫障害リスクを下げるのに役立ちます。
最新の研究では、心血管疾患、ガン、糖尿病、糖尿病に関連する合併症といった状態がビタミンD不足と密接に関係していることも分かりました。
今回は、眼の健康におけるビタミンDの役割について調べてみたいと思います。その抗炎症特性は、体に与えるその他多くの効果に加えて、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症、近視、ドライアイ(乾燥性角結膜炎)といったあらゆる眼疾リスクを下げるのに役立つことができます。
さらに重要なことは、低ビタミンDレベルはこれらの症状を発症するリスクが高いことと密接に関係しています。 では、ビタミンDと眼の健康はどうつながっているのでしょうか?一緒に見ていきましょう。
1. ビタミンDと黄斑変性
黄斑変性は高齢者における視力低下の主要原因です。この症状になると、黄斑(網膜の中心にある小さな点)が損傷を受けます。またの名を加齢性黄斑変性(AMD)といいます。
黄斑は何百万もの感光細胞(杆体錐体)で出来ており、中心視覚に加えて鮮明・詳細な視覚を担っています。黄斑が損傷すると、中心視覚がぼやけたり乱れてしまいます。これは、読む、書く、運転する、料理をする、顔を認識するといった、シンプルな日々の動作に影響を及ぼします。さらにAMDは色を識別する能力も低下させます。
ビタミンDの役割を理解するために、AMDの段階を理解することが重要です。
早期AMD
- 小~中型のドルーゼン(目の中に蓄積する脂肪やタンパク質の黄色い沈着物)が特徴。
- 特定の症状や視力低下などは起こらない。
診断や治療などを怠ったままでいると、進行型に変化し、霧視や乱視につながります。
中期AMD
- ドルーゼンの数が増え、大きくなる
- 症状が顕著になり、中心視覚がぼやけ、多くの光が必要になる。
- 大きいドルーゼンは、進行型である滲出型黄斑変性のリスクを増加させる。これにより、中心視覚の突然損失を引き起こすことがある。
ドルーゼンは黄斑への酸素と栄養素の供給を妨害します。また、これらの点は老廃物の排除を妨げます。これにより、網膜色素上皮細胞の劣化や死を引き起こします。
後期AMD
- 黄斑および支持組織内で感光細胞が徐々に崩壊していくのが特徴。中心視覚のぼやけた部分が大きく、暗くなる。これにより、時間の経過とともに視力が低下につながる可能性がある。これを非滲出型AMDと呼ぶ。患者の大多数は非滲出型AMDと診断される。
- 非滲出型AMDがさらなる進行型のAMDに変化する場合があり、これは新血管の成長(血管新生)および網膜組織の瘢痕化(線維症)が特徴である。これを滲出型AMDと呼ぶ。このような損傷によって起こった視力低下は永久的なもので、手術や注射で回復させることはできない。視界不良、視界の中心に灰色の点が存在するなどの症状を含む。滲出型AMDの患者は、直線が波状または湾曲しているように見える。
網膜へ酸素・栄養素が豊富な血液供給を改善させようと試みるために、新血管は成長します。しかし、これらの新しい脆弱な血管は血液や液体を漏出させ、網膜細胞に深刻な損傷を引き起こします。また、このプロセスは網膜組織の瘢痕化を引き起こします。さらに、液体が蓄積すると黄斑が浮き上がり、膨らみます。急で重い視力変化がしばしば起こるのはこのためです。
年齢的、遺伝的、また喫煙などの環境的要因がAMDの発症に関与している一方で、最近の研究は炎症がAMDの発症に大きな役割を果たしている可能性があることを示唆しています。ドルーゼン内で炎症分子が見つかっており、炎症の中心的役割を裏付けています。
研究は、ビタミンDレベルが低いと早期/後期AMDリスクを増加させることを示唆しています。 [1] [2] さらにビタミンDは、炎症、酸化損傷、血管新生(新血管の成長)、線維症との戦いにおいてとても大きな役割を担っていると考えられています。これらの特性はAMDの発症や進行を抑制する可能性があります。 [3] [4] [5] さらに、2015年に行われた研究は、もし遺伝的に黄斑変性症を発症しやすい場合、健康なビタミンDレベルを維持することでいくつかのリスクを下げるのに役立つかもしれないと示唆しています。[6]
残念ながら、AMDは治療することができません。人は通常、病初に視力低下を経験しないため、眼の検査を定期的に行うことは重要です。あなたにそのリスクがあるのであれば、特に重要になります。
2. ビタミンDと糖尿病網膜症
糖尿病を患っている方は、糖尿病網膜症(DR)などの細小血管合併症の高い発症リスクにあります。事実、DRは血糖値の管理ができていない糖尿病患者に最も多い合併症の一つです。しっかりと治療しなければ、失明につながることもあります。
高血糖値は網膜の小血管に損傷を与えることで知られています。これらの管は網膜に酸素や栄養素を供給する役割を担っています。
- 初期段階では、これらの血管は小さな腫れを発症させ、網膜内で液体を漏出させやすくします。
- 病状が進むとその血管が膨張し始め、網膜に酸素を豊富に含んだ血液を供給できなくなります。
- 後期段階では、網膜は異常血管の形成を誘発する成長因子を放出します。このプロセスは新血管形成と呼ばれ、これにより体は網膜への酸素供給を取り戻します。しかし、これらの脆弱な新血管は頻繁に破裂し、眼の中を満たす液体である硝子体ゲルに血液を漏出させます。眼の中で起こるこれらの危険な変化は、治療をせずにいると、視界不良や、さらには完全な視力喪失を引き起こすことがあります。この状況は、血糖値を管理し、定期的に眼の検診を行うことで防ぐことができます。
新血管の成長や慢性炎症は糖尿病網膜症の発症において最も重要な要因です。ビタミンDは、炎症と血管新生の抑制において重要な役割を果たしおり、それ自体でDRを予防すると考えられています。
さらに、最新の研究は、低ビタミンD状態がDRと密接に関わっていることを示しています。 [7] 2017年のメタ解析で、ビタミンD不足が2型糖尿病患者の糖尿病網膜症リスクを増加させる可能性があることが分かっています。 [8]
別の研究は、「低血清25-OHDレベルは、2型筋強直性ジストロフィー(DM2)患者における、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症の独立予測因子であった」と結論しました。 [9]
ビタミンDと糖尿病
血糖値と高血圧の管理不足は、網膜症の強いリスク要因です。そして、血糖と血圧におけるビタミンDの役割は実証されています。
「カルディオヴァスキュラー・ダイアビトロジー(心血管と糖尿病学)」で発表された研究は、健康なビタミンD状態(≥75 nmol/L)は糖尿病網膜症リスクを下げる効果がある可能性があると結論しています。研究者は、この効果の理由はビタミンDの血糖を調節する能力にあるのではないかと推測しています。 [10]
より最近の研究では、血液中ビタミンDレベルがより高いほど、糖尿病を発症するリスクが低いことを示しています。 [11] これらの関連性を提示するのはこの研究が初めてではありませんが、糖尿病リスクの軽減におけるビタミンDの役割を確認するにはさらなる研究が必要であると研究者は考えています。
2018年の研究では、糖尿病前症を患っているアジアのインド人女性において、低ビタミンDレベルが高血糖と関係していることが分かりました。糖尿病前症(腹部脂胖症、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム(代謝症候群))を患っている方は、2型糖尿病および心血管疾患発症のリスクが高いです。 [12]
別の2018年のメタ解析は、「ビタミンD補給とビタミンD状態の改善は、血糖測定とインスリン感受性を向上させ、2型糖尿病の予防対策として有用の可能性がある」と結論しています。 [13]
糖尿病網膜症は初期段階において顕著な症状が現れないことがあります。したがって、完全失明が起こる前に、状態を早期に発見することがいっそう重要なのです。低ビタミンDレベルとDRリスク増加の関連性を考慮すると、適時に治療するためにも、ビタミンDレベルのチェックは問題の早期発見に有用な方法でしょう。
3. ビタミンDと近視
近視の方は近くの物をはっきり見ることができます。すなわち、本やコンピューター画面など目の前にあるものを読むことができるということです。しかし遠くの物はぼやけて見えます。近眼ともいいますね。
この状態だと、眼は前方から後方に長く伸びすぎてしまいます。その結果、光線が網膜に正しく焦点を合わせられません。眼の後ろの光に感応する薄層の問題です。通常、角膜と水晶体は網膜の光線に焦点を合わせます。網膜は光を感知してそれを信号に変換し、信号は脳へと運ばれます。それから脳はそれらの信号をあなたが最終的に目にする映像に変換します。近視の場合、目が長すぎるため、水晶体は網膜ではなく、網膜の目の前にある光に焦点を合わせます。この結果、像がぼやけてしまうのです。
遺伝子は近視において大きな役割を担っていますが、屋内で長時間過ごしたり、精密作業をするといった特定の要因もまた、リスクを増加させます。したがって、読書をよくする方、コンピューターやスマートフォンをよく使う方は、近視になる確率が高いです。
ビタミンDと近視はどう関係しているのか?
多くの研究で示されている通り、低ビタミンDレベルは近視リスクの増加と関係しています。 [14]
では屋外で遊べば近視のリスクを下げられるのでしょうか?最新の研究は、子供が屋外で遊ぶ時間が増えると、近視になるのを防げると示しています。なぜ屋外で遊ぶことが役立つのかについては、多くの理論があります。例えば、太陽光の中で遊ぶことで体がより多くのビタミンDを生成し、それによって子供の眼の異常成長を防ぐ役割を果たしています。明るい光が役に立っているとする別の理論もあります。屋外の明るい光が網膜の細胞を刺激してドーパミンを放出します。それが複数の効果をもたらし、ゆっくりと眼の通常成長を促進します。[15]
別の研究では、近視ではない子供と比べて、近視の子供はより長い時間を屋内で過ごし、ビタミンD状態が低く、肥満度指数が高く、スポーツをしている率が低いことが示されています。[16]
この2016年の研究は、6歳の子供において、血中の低ビタミンDレべルは、眼軸長が長いことと近視リスクの増加と関係していることを示しています。興味深いことに、この影響は屋外暴露とは無関係であることが分かっており、近視の発症においてビタミンD不足が直接的な役割担っていることを示唆しています。[17]
4. ビタミンDとドライアイ
ドライアイは、目に十分な水分や涙がない状態です。通常まばたきをすると、角膜と呼ばれる目の表面に涙の層が広がります。涙は目の表面の潤いを保ち、さらに眼感染症リスクを増加させるほこりや微生物などを洗い流します。眼の健康および鮮明な視界には十分な量の涙の層が常に必要です。
乾燥、赤み、眼の灼熱感、光に対する感受性の増加、視界不良などの症状がある場合は、ドライアイの可能性があります。ドライアイの注意すべきもう一つの重要な症状は、以前より目が疲れやすくなっているかどうかです。
近年多くの研究が、ビタミンD不足がドライアイ症候群を引き起こす可能性があることを示しています。 [18] [19] [20] [21] 炎症がドライアイの根本的な原因であることが頻繁にあるため、この関連性は道理にかなっています。研究は、低ビタミンDレベルがドライアイと涙機能不全を引き起こす可能性があることを示しています。 [22] そして同研究はさらに、ビタミンDの炎症の軽減や涙液膜機能の向上といった能力のために、ここで保護的な役割を果たしている可能性があることを報告しています。[23]
この2016年の研究は、ビタミンD補給は、従来の治療法が効かないドライアイ症候群の患者に対して効果的な方法であると結論しています。 [24] ビタミンD補給に関するメカニズムの詳細は以下のように報告されています。
- ビタミンD補給は涙の分泌を刺激する
- 涙の不安定性を軽減
- 炎症の低下
- ドライアイ症候群の症状改善
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
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- Morrison et al. Systems biology-based analysis implicates a novel role for vitamin D metabolism in the pathogenesis of age-related macular degeneration. Hum Genomics. 2011
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- Lee et al. Vitamin D rejuvenates aging eyes by reducing inflammation, clearing amyloid beta and improving visual function. Neurobiology of Aging. 2012
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