コエンザイムQ10不足の兆候 (SQ-87)
筋力低下、低エナジーレべル、思考緩徐などの症状は、大抵の場合分かりづらく、加齢の兆候として見過ごされがちです。ではすべての血液検査結果が正常に戻った場合はどうなるでしょう?医者からこれらの症状と共に過ごすよう伝えられるでしょう。
しかしながら、これらの兆候を取り除くのは、コエンザイムQ10不足に対処するのと同じくらいシンプルであるかもしれません。何をやってもこれらの症状の改善が見られないようであれば、コエンザイムQ10のレベルが低い可能性があります。
ではコエンザイムQ10とは何なのでしょうか?コエンザイムQ10もしくは補酵素Q10は、体のエネルギーを作りを促進する、ビタミン様物質です。これは体のすべての細胞内に自然に存在しています。ユビキノンやユビキノールと言う名で知られているのは、これらが「ユビキタス(あらゆるところに同時に存在するの意)」であるためです。
コエンザイムQ10とは基本的に、酵素の役割を手助けする補酵素のことです。酵素とは、細胞内で化学反応を起こさせるとても小さな分子です。酵素なしでは、生化学反応は非常に遅い速度で起こるか、起こらないかのいずれかです。補酵素は化学反応においてヘルパー分子として機能します。体内のほとんどの補酵素は、ビタミンか、ビタミンから派生するかのいずれかです。例えば、ほとんどのビタミンB群は補酵素として機能します。
コエンザイムQ10に話を戻すと、ではコエンザイムQ10不足を発症するリスク要因は何なのでしょうか?そして、不足を取り戻すために何ができるのでしょうか?これらについて話を進める前に、体にさまざまな影響を与える多くの重要な役割を、コエンザイムQ10はどのようにして果たすのかを見てみましょう。
体内のコエンザイムQ10の役割
コエンザイムQ10は、体内のエネルギー(アデノシン三リン酸)生産に役立ち、ここでユニークな役割を果たします。簡単に言ってしまえば、エネルギー生産の過程において他の分子がコエンザイムQ10の代わりになることはできません。
すべての器官が機能するためにエネルギーを必要とする中で、他よりもエネルギー需要の高い器官もあります。体内の大部分のコエンザイムQ10が心臓に集中しているのは、エネルギー所要量が膨大であるためです。脳、骨格筋、肝臓、腎臓、肺といった他の器官も、非常に高いコエンザイムQ10量を有しています。これらのすべての器官が機能し、細胞の中により多くのミトコンドリアを有してさらなるエネルギーを供給するためには、相当なエネルギーが必要です。したがってコエンザイムQ10のレベルが低いと、多くの器官、特に心臓、脳、筋肉、腎臓といった機能に影響をおよぼす可能性があります。
またコエンザイムQ10は、フリーラジカルを除去し、細胞を酸化、および結果として生じる損傷から守る、抗酸化物質としても機能します。抗酸化物質としてコエンザイムQ10は多くの予防効果を有しています。例えば、これはアテローム性動脈硬化症(動脈内にプラークが蓄積する症状)発症の主要過程の一つである、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑制します。アテローム性動脈硬化症によって、心臓発作や脳卒中のリスクが高くなります。
またコエンザイムQ10は、ビタミンCやEといった他の抗酸化物質をリサイクルします。一体どういう意味でしょうか?これは抗酸化物質の働きと関係があります。抗酸化物質は、安定を得るために積極的に電子を探している、高反応性で不安定な分子、フリーラジカルに余分な電子を与えることで機能します。フリーラジカルは電子を奪うために近くの安定した分子を攻撃し、これによってそれらの化学構造、機能、安定性を乱します。これを酸化と呼び、酸化損傷へとつながります。
コエンザイムQ10などの抗酸化物質は、余分な電子を提供することでフリーラジカルを監視し続けます。これは、細胞傷害、不要な免疫反応、炎症を引き起こす、酸化ストレスを抑制します。慢性炎症は、心臓疾患、肥満、2型糖尿病、白内障、アルツハイマー病、パーキンソン病、ガンなどを含む、多くの疾患の根本的なメカニズムとして知られています。
抗酸化物質が予備の電子を与えた後、それは自身を弱いフリーラジカルに変換させます。コエンザイムQ10はビタミンCやビタミンEといった他の抗酸化物質を再生産し、フリーラジカルを中和した後で、それらを当初の状態へと戻します。
コエンザイムQ10不足の兆候
低コエンザイムQ10レベルの兆候や症状の大部分は、十分なエネルギー作りや、酸化損傷と戦う能力の低下を中心に展開していきます。
- 筋肉痛
- 疲労
- 息切れ
- 記憶の問題
- 精神錯乱
- 胸の痛み、狭心症、不整脈、心不全といった心臓の問題
- 歯周疾患
- 突然の発作(欠乏が深刻な場合)
ただしこれらの兆候は、その他の状態によって引き起こされることもあります。これらの症状から、明確にコエンザイムQ10不足であることを突き止めるのが困難なのは、そのためです。
コエンザイムQ10と慢性疾患の治療
コエンザイムQ10サプリメントは、ミトコンドリア機能を改善し、酸化損傷を抑制し、炎症を制御することができます。したがって、コエンザイムQ10の補給は、心血管疾患、メタボリックシンドローム(代謝症候群)、糖尿病、筋ジストロフィー、線維筋痛症、神経変性疾患、不妊症、偏頭痛、歯周疾患などを含む、多くの健康状態に有益であることが分かっています。これらの多くの健康状態は、酸化損傷の増加、放置された炎症、ミトコンドリア機能不良(これは細胞内のエネルギー産生障害につながります)などに由来します。
コエンザイムQ10サプリメントは、心血管疾患の治療および制御、特に心不全の症状改善に驚くほど有用な可能性があると、研究で示されています。 [1] 先にお伝えしたように、体に存在するコエンザイムQ10の多くは心臓に集中しています。心臓は日夜休むことなく動き続けるため、莫大な量のエネルギーを必要とします。
コエンザイムQ10レベルの低下は、心筋の強度と機能に影響を与え、息切れ、疲労、衰弱といった症状を伴った心不全を引き起こしてしまうこともあります。同様に、脳や筋肉といった他の組織や器官の機能を維持するために、体には健康的なレベルのコエンザイムQ10が必要です。脳は非常に多くのコエンザイムQ10を有しているため、レベルが低いと混乱や思考が曇るなどのっ症状を引き起こします。
概して、コエンザイムQ10は細胞エネルギーとミトコンドリア機能の維持に役立ちます。また、酸化損傷や炎症を起こすことで知られるフリーラジカルと戦います。これは老化の加速や、加齢に伴う疾患へとつながる可能性があります。この能力において、コエンザイムQ10サプリメントは計り知れない効果を示しています。例えば、以下に役立ちます。
- 心筋を活性化し、ポンプ作用を維持
- 線維筋痛症を持つ方の疲労、痛み、うつ病といった症状を改善
- 運動性能を向上させ、筋肉への損傷リスクを軽減
- 偏頭痛の発症頻度と重症度を低下
- スタチンの長期使用に関連する筋力低下や関節痛を和らげる
- 歯周疾患における炎症を軽減
- 男性女性両方における繁殖(受精)力パラメーターの向上
コエンザイムQ10サプリメントは、HIV/エイズ患者の免疫機能を改善し、筋ジストロフィーを患っている方の運動能力および全体的な生活の質を向上させることができると、予備研究は示しています。また初期の研究では、コエンザイムQ10はアルツハイマー病患者の認知症の進行を遅らせる可能性があるとして、有望視されています。しかしこれらすべての慢性疾患における、コエンザイムQ10サプリメントの有効な役割を証明するには、さらなる試験や研究が必要です。
コエンザイムQ10不足の原因は?
体はコエンザイムQ10を独自に生成しますが、加齢とともにレベルは下がっていきます。さまざまな食品からコエンザイムQ10を一定量得ることはできますが、健康的なレベルを維持するには十分な量ではありません。コエンザイムQ10不足の原因となり得るさまざまな要因を見てみましょう。
1. コエンザイムQ10が豊富な食品を組み込んだ食生活:心臓、肝臓、腎臓といった内臓肉や、魚(特にイワシ、サバ)は、食生活におけるコエンザイムQ10の優れた供給源です。ピーナッツ、ブロッコリー、カリフラワーにもコエンザイムQ10は豊富に含まれています。しかし、コエンザイムQ10を豊富に含んだ食事が毎日取れるわけではありません。さらに、加工食品やインスタント食品を消費する現代の傾向も、コエンザイムQ10の摂取量を制限しています。
2. 年齢:成人早期の頃と比べ、コエンザイムQ10の生成量が減ってきているのは事実です。 当然のことながら時間の経過と共に低下します。食生活から十分なコエンザイムQ10を摂取する機会が少ないという事実と合わせ、加齢と共にコエンザイムQ10が不足していくのは一般的です。
3. 多くのコエンザイムQ10が奪われる条件:体が必要とするコエンザイムQ10および抗酸化物質の量は、一定の状態(特に酸化損傷や炎症が増加する時)に高まります。これは、貯蔵してある利用可能なコエンザイムQ10よりも多くの量を組織が必要としているためで、さらなる不足につながります。心臓疾患、心不全、ガン、HIV/エイズ、パーキンソン病、歯周疾患、2型糖尿病、筋ジストロフィー、ミトコンドリア機能不全、その他の状態を持つ方は、コエンザイムQ10レベルが低いことが分かっています。コエンザイムQ10レベルが低下するその他の外的要因は以下です。
- 慢性的なストレス
- 環境毒素への暴露
- 喫煙
- スタチン、ベータブロッカー、抗生物質、三環系抗うつ薬としてしられる特定の抗うつ剤など、特定の薬品の使用。
4. 栄養不足:コエンザイムQ10の内因性合成には、余因子としてビタミンB6が必要です。ビタミンB6不足、およびオメガ3脂肪酸の低い食生活は、体のコエンザイムQ10レベルに悪い影響を与えることで知られています。
5. 遺伝的要因: 特定の遺伝性疾患はコエンザイムQ10の生成を妨げることがあり、時には体内の機能の妨げにもなり、コエンザイムQ10の原発性欠乏症を引き起こします。これは、筋緊張低下、知的障害、発作、深刻な神経症状などを引き起こすことがあります。
スタチンはコエンザイムQ10レベルを下げる
スタチンはコレステロールを低下させる薬です。これはコレステロールの生産に関与する酵素経路を塞ぐことによって、コレステロールレベルを減らします。しかし、これはコエンザイムQ10を生成する経路でもあるのです。スタチンの長期使用は体内の全体的なコエンザイムQ10レベルを下げることがあります。この結果、筋疲労、関節痛、関節損傷といった症状になります。 [2] アデノシン三リン酸の生成においてコエンザイムQ10は重要な成分であるため、不足は筋肉のエネルギー代謝に影響を及ぼし、これらの症状を引き起こす結果になることは明らかです。
さらにコエンザイムQ10サプリメントは、コレステロールレベルの制御にスタチンを使用している方の、筋肉痛やその他筋肉の健康と関連する軽度の症状を、効果的に軽減することができます。 [3] [4]
コエンザイムQ10の状態を改善するために何ができるか?
コエンザイムQ10が豊富な食品の摂取は役立ちますが、それだけでは十分ではないかもしれません。さらに今日ほとんどの人は、時間がない、またはインスタント食品が簡単に手に入ってしまうために、バランスの取れた栄養価の高い食生活を送れていません。
リポソームコエンザイムQ10サプリメントの使用は、レベルを向上するためには素晴らしい方法です。リポソーム技術によって、細胞がより多くのコエンザイムQ10を使用できるようになります。
コエンザイムQ10サプリメントを服用する前に、医師に必ず相談してください。コエンザイムQ10は、糖尿病薬、血液希釈剤(ワーファリン)、血圧を下げる薬など、複数の薬の妨げになる可能性があります。またコエンザイムQ10は、ダウノルビシン、ドキソルビシンといった化学療法剤を妨げ、ガン治療の効果を下げてしまう可能性もあります。コエンザイムQ10サプリメントは、妊娠中や授乳中の方にはお薦めできません。また、お子さまへの使用も避けてください。
コエンザイムQ10サプリメントは、健康な成人への使用は一般的に非常に安全であると考えられていますが、吐き気、胃のむかつき、下痢といった軽い消化器症状が出る方もいらっしゃいます。また、皮膚発疹など望ましくない副作用を引き起こす可能性もあります。
ユビキノンとユビキノール:コエンザイムQ10の形態はどちらを取るべきか?
コエンザイムQ10のより良い形態に関しては、相反する情報が多く溢れています。コエンザイムQ10には、ユビキノンとユビキノールという二つの形態があります。どちらか一方がもう一方より優れているというようなことがあるのでしょうか?多くのサプリメント会社が謳っているように、ユビキノールの方が良いのでしょうか?
実際のところ、体はコエンザイムQ10の両方の形態を必要としており、必要とされている方にもう一方から変換することができるのです。では、どう機能するのでしょうか?
ユビキノン:これは酸化型コエンザイムQ10です。この形態では、コエンザイムQ10はATP合成における余因子として機能します。エネルギーを生産するためにユビキノンは必要なのです。一度使われるとすぐにユビキノールへと変換され、抗酸化物質として使用されます。
ユビキノール:これは還元型コエンザイムQ10です。この形態では、コエンザイムQ10は体内の強力な抗酸化物質として機能します。細胞膜と脂質を、特にフリーラジカルによって引き起こされる酸化損傷から守ります。電子供与体としてユビキノールは、ユビキノンやビタミンCやEといった他の抗酸化物質をリサイクルするのに役立ちます。一度抗酸化物質として使われると、すぐさまユビキノンへと変換され、エネルギー合成に使用されます。
事実、ユビキノンの健康効果は何年にもおよぶ臨床試験と研究によって裏付けられています。例えば、有名なQ-SYMBIO試験においてコエンザイムQ10はユビキノンの形態で使用されました。この研究は、心不全症状の改善、および入院や緊急移植などにつながる可能性のあるケースのリスク軽減における、付加物としてのコエンザイムQ10の有効な役割を示しました。 [1] 一方、ユビキノールは最近になって利用可能になりました。
どの形態でコエンザイムQ10摂取しようと大きな問題ではありません。体が必要とし使用する度に、どちらの形態ももう一方の形態に素早く変換されるのです。
どちらの形態のコエンザイムQ10も同じなら、より手頃な価格の形態でサプリメントを買った方がいいですよね?
ユビキノールの形態が急速に酸化され、それが非常に不安定になることを考えると、加工・製造するのは決して安くはありません。したがって、ユビキノンの方がお得になります。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Mortensen SA et al. The effect of coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure: results from Q-SYMBIO: a randomized double-blind trial. JACC Heart Failure. 2014
- Mansi et al. Statins and Musculoskeletal Conditions, Arthropathies, and Injuries. JAMA Internal Medicine. 2013
- Caso G et al. Effect of coenzyme q10 on myopathic symptoms in patients treated with statins. American Journal of Cardiology. 2007 May 15;99(10):1409-12. Epub 2007 Apr 3.
- Skarlovnik et al. Coenzyme Q10 Supplementation Decreases Statin-Related Mild-to-Moderate Muscle Symptoms: A Randomized Clinical Study. Medical Science Monitor. 2014
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