楽観的な人は、最初の心臓発作から長生きする可能性が高い (SQ-88)
「楽観主義とは達成へ導く信念である。希望や自信がなくては何事もなし得ることはできない。」―ヘレン・ケラー
あなたにはガラスのコップがどのように見えますか?「半分しか入ってない」と見ますか?それとも「半分も入っている」と見ますか?あなたの心臓の健康もそれ次第なようです。
楽観的な人は、人生観があまり明るくない人と比べて、より健康かつ長生きもすると研究は示しています。楽観的でいることは精神的および身体的な健康にとって良いことなのです。しかし心臓発作が起こった後でも、それは長生きに役立つのでしょうか?心臓の健康にとって良いことなのでしょうか?
心臓発作を発症した後の平均余命は、さまざまな要因に左右されます。例えば、発作は重いものだったのか、それとも軽いものだったのか?治療はどれほど迅速に行われたか?年齢、性別、生活スタイルといった要素も、心臓発作がどうその人の余命に影響を与えるかに関して、大きな役割を担っています。しかしそのような出来事の後で、楽観性は寿命の向上にどのように関係するのでしょうか?
楽観性とは、いわば人生に前向きな期待を抱くことです。人生に対して楽観的な性質を持っていると、心臓の健康に驚くほど効果があると多くの研究が実証しています。これらの研究についてはこの記事の後半で触れるとして、まずは楽観的なアプローチは心臓発作後に長生きするために必要であるとする2016年の研究を見てみましょう。
もちろん、心臓発作後の生活を管理する上で、医療、生活習慣および食生活の見直しが持つ役割を過小評価することはできません。しかし、ジャーナル・メイヨ・クリニック・プロシーディングで発表されたこの調査に基づくのであれば、楽観性もいくつかの役割を果たしていると思われます。イスラエル、テルアビブ大学のヤリブ・ガーバー医師が率いた研究では、以下のことが解明されました。
- 前向きな人生観の人は、悲観的な考え方の人よりも、心臓発作の後で長く生きる可能性が高い。
- 楽観的な人は、教育を受け、雇用され、強力な社会支援を受けられる機会が多い。こういった人は喫煙をしたり、うつ症状を患う可能性が低い。
研究は以下のように結論しています。「 過去20年間の観察期間において、心筋梗塞で入院している最中に高い楽観性を持つことは、死亡率の軽減と関連している。楽観性のトレーニングおよびポジティブ心理学は、心筋梗塞後の心理社会的介入およびリハビリとして検討すべきである。」[1]
人生および心血管の健康に明るい見通しを
感情的な健康と身体的な健康のつながりは、新しくもなく、また驚くべきことでもありません。事実、楽観的でいることと、より良い心臓の健康の明らかな相関を示す証拠は山のようにあります。BMJオープンで発表された最新の2018年の研究によると、明るい人生観はあなたの心血管の健康を改善します。
研究者はアメリカ心臓協会の「 人生のシンプルな7つのポイント」アセスメントを使って、研究参加者の心血管の健康(心臓スコア)を評価しました。これら7つのパラメーターには、血圧、コレステロール、血糖値、運動、ダイエット、体重、喫煙が含まれます。さらに研究者は、改訂版楽観性尺度を使って、参加者の楽観性レベルも測定しました。この評価には、その人の総合的な人生観を表す一連の質問が含まれています。研究結果は高い楽観性と心血管の健康改善の強い関係を示しました。この研究は「 ヒスパニック/ラテン系の成人から成る大きな混成グループにおいて、楽観性と心血管の健康の関連性における予備的証拠を提供するものである。我々の研究は、心血管の健康を促進する可能性のある心理的利点の科学的知見を加え、考慮すべき新しい治療標的を示唆している。」 [2]
観察研究であるため、因果関係を証明するものではありませんが、明るい人生観は心臓および健康全体の向上において重要なツールであることを示す過去の研究によって、強い相互関係は裏付けられています。 この研究の主任研究者であるロザルバ・ヘルナンデス氏はこう語っています。「 各個人の成人楽観性レベルにおける増加は、4つ以上のメトリクスで理想的な心血管の健康基準を満たす確率が3%高いことと関連していました。楽観性と心血管の健康の相関性は、年齢、性別、文化的レベルにかかわらず異なる人種グループにわたって一貫していました。」 [3] 多くの研究で、楽観性は以下のものと関係があることを示されています。
- 健康的な脂質プロファイル(多くの善玉コレステロール、低いトリグリセライドレベル) [4]
- 冠動脈心疾患による死亡リスクの軽減 [5]
- 心臓手術からの早い回復
- 心血管疾患リスクの軽減 [6]
- ストレスによって誘発された炎症レベルの軽減 [7] [8]
- 冠動脈心疾患を持たない健康な年配男性における炎症レベルの軽減、およびより良い内皮機能。内皮機能は心臓の健康の決定的要因である。 [9]
別の研究では、楽観性が急性冠症候群後の回復にも影響する可能性があることを示唆しています。これは、冠状動脈に閉塞があり、心臓への血液の流れが不十分になる類の状態を表す用語です。これによって心臓発作や不安定狭心症を引き起こすことがあります。
ロンドン大学の研究者による研究では、心臓発作や不安定狭心症から回復している369人に対して、楽観性が身体的および精神的な健康におよぼす影響を調査しました。この研究では、心臓発作や脳卒中といった主要な心臓事象が46ヶ月以内に起こる可能性を監視しました。
結果、より楽観的な取り組みでうつ症状が少ない人は、主要心臓事象や心臓に関連した問題で死亡するリスクが半分であることが分かりました。また、より楽観的な人はその他の特長も共有していました。例えば、これらの人々は喫煙していることが少なく、推奨された量の果物や野菜を食べている可能性が高かったのです。彼らは身体的にもより健康でした。
研究は以下のように結論しています。「
楽観性は、急性冠症候群後のより良い健康状態を、肉体的にも精神的にも予測するものである。楽観性の測定は個人のリスク特定に役立つ可能性がある。悲観的な見通しは変えることができ、主要心臓事象後の 回復を改善する可能性がある。」 [10] その結果、楽観的な人は禁煙や健康的な食事の摂取など、より良い健康に貢献するような変化に対してよりオープンであることが示唆されました。
楽観的な人は悲観的な人に比べ、冠状動脈バイパス手術などの事象からの回復が早い可能性が高いのです。事実、人生に前向きな期待を抱き、未来に希望を持っている人は、ガンやHIV/エイズなどの病気と診断された後でも長く生きる傾向があるのです。また、あまり希望を持たない性質の人と比べ、彼らは生活の質も高いのです。
楽観性と高血圧症リスクの軽減
このハーバード・ヘルス・パブリッシングからの記事ではフィンランドで行われた研究に言及しており、明るく前向きな見通しを持つことで、心血管疾患の主要なリスク要因の1つである高血圧の発症リスクが軽減されることが示されています。悲観性のレベルの高い男性は、人生に対して楽観的な人に比べて、血圧が3倍高くなる可能性があることが分かりました。研究者らは、喫煙、肥満、座りがちな生活スタイル、過剰な飲酒、高血圧の家族病歴など、他の重要な心血管のリスク要因を考慮した後でさえ、リスクは存在しました。
では心臓の健康を助けることができる、「楽観的でいること」はどういったことなのでしょうか?楽観性はどのようにして役立つのか?
専門家は、人生に対して前向きでいることは、生活において良い変化を起こすことにオープンになり、健康を改善する手助けになると信じています。より積極的に運動をしたり、食生活を健康にしたり、喫煙などの体に悪い習慣を止めたり、それが何であろうと、ガラスのコップに「半分も入っている」と見る人は、より良い健康結果を得るのに役立つ変化を受け入れる傾向にあります。
楽観性とは単純に無知であったり、悪い結果を過小評価したりすることとは違います。甘い考えを持つこととは違うのです。むしろ、リスクや悪化する可能性があることを受け入れ、そこから具体的な形でそれらのリスク対処に役立つ計画と戦略を練ることを言うのです。 楽観性は心臓の健康を向上させるためにどのように役立つと思いますか?何かしらのメカニズムが関与しているのでしょうか?根本的なメカニズムの全貌は明らかになっていませんが、明るい人生観を持つことはさまざまな形でより良い健康達成に役立つ可能性があります。 希望に満ちた心構えの人は、以下のような傾向があります。- より健康的な生活スタイルを追求する傾向があり、心臓の健康をサポート、維持するために必要な食生活や生活習慣の変化を選ぶ傾向にある。さらに、医学的なアドバイスに従いやすい。
- リスクをより理解し、健康目標達成のための計画を作る。
- ストレス、不安、うつ病レベルが低い可能性がある。これらすべての要因は、炎症および免疫機能不全を促進する。
- 炎症レベルが低い。慢性、全身性炎症は心臓の健康にとって非常に大きなリスク要因の一つ。これは心臓発作および脳卒中のリスクを増加する、アテローム性動脈硬化症(動脈内でプラークが蓄積する症状)の発症と進行に関わる重要なステップの一つである。楽観的な人はC反応性タンパク質(CRP)やインターロイキン6といった炎症マーカーのレベルが低いことが研究で示されており、これらのマーカーは根本的な炎症や心臓発作および脳卒中のリスクの予想に使用される。
- より良い社会関係およびサポートシステムを持つ傾向にある。
- 喫煙や、飲み会などで大量の飲酒をしたりしない傾向にある。
その他、心臓の健康改善のためにできることは何か?
薬物治療に加えて、生活スタイルや食生活の改善も、心臓に必要なすべての追加サポートを与えるために重要です。先にもあった通り、人生の困難に対して楽観的でいたり、前向きな結果を望むことは心臓にとって良い働きをします。
しかしながら、従来の心臓専門医がほとんど見落としがちなもう一つの側面があります。そう、栄養サポートです! 特定の栄養素は心臓の健康に非常に効果的です。心筋の十分なエネルギー作りのサポートにしても、酸化損傷と炎症を軽減するための抗酸化サポートにしても、これらの栄養素は心血管全体の健康維持において非常に重要な役割を果たします。 コエンザイムQ10、マグネシウム、ビタミンD3、ビタミンK2などの栄養素が、心臓を酸化ストレスや炎症から守るために極めて効果的な役割を担っていることを示す、多くの化学的データが存在します。さらに、これらの心臓を保護するビタミン、ミネラル、補酵素も、インスリン抵抗性、糖尿病、高血圧、内皮機能不全などの、心血管の健康を害すリスク要因に良い影響を与えます。さらに体がこれらの栄養素不足になると、心臓疾患リスクおよび関連するリスク要因が増加します。抗酸化物質および抗炎症特性によって炎症を軽減することは、コエンザイムQ10、マグネシウム、ビタミンDが心臓の健康を高めることのできる最も重要なメカニズムの一つです。急性、短期の炎症は感染症と戦い傷を癒すために重要ですが、長期の炎症は心臓の健康およい健康全体に有害となります。 先に述べたように、体内の持続的な炎症(長期におよぶ感染症、慢性的なストレス、および環境毒素への暴露によるもの。これらの要因はすべて酸化損傷および炎症の重症化につながる)は、ガン、白内障、黄斑変性、2型糖尿病、関節炎、自己免疫異常、アルツハイマー病、パーキンソン病といった、炎症を原因とする症状はもちろんのこと、心臓疾患発症の主要なステップの一つです。 強力な抗酸化および抗炎症特性に加え、これらの栄養素(コエンザイムQ10、マグネシウム、ビタミンD3、ビタミンK2)は心臓への健康効果がある、他の複数のメカニズムを介して機能します。例えば、コエンザイムQ10は体内でエネルギーを生成する生化学反応において不可欠な役割を果たしています。心臓は機能するために多くのエネルギーを必要とするため、コエンザイムQ10は心機能改善のために摂取できる最高のサプリメント内の一つです。これは特に心不全の症状改善、およびさらなる心臓発作リスクの軽減に効果があります。また心臓手術の最中および後で、その抗酸化物質によって心臓を守ります。 マグネシウム、ビタミンD3、ビタミンK2は血圧の低下、およびインスリン感受性、心臓疾患のリスク要因改善に役立ちます。さらにマグネシウムはストレスレベルの軽減に非常に効果的です。マグネシウムおよびビタミンK2不足は、動脈内における過度の石灰化(カルシウムの蓄積)を促進することで知られています。これらの栄養素はどちらも、冠動脈心疾患や末梢動脈疾患を引き起こす、動脈石灰化リスクを軽減します。 あなたの心臓を良い状態に保つために、多くの要素が関わっているのです。新鮮な食品を使った健康的な食生活を消費することから、積極的に運動し抗酸化物質サプリメントを摂取することまで、心臓の健康をサポートするために出来ることは多くあります。同時に、最悪な事態を想像するよりも前向きに日々を送ることを忘れずに。健康維持のために、体に追加ツールを与えましょう。これは心臓発作の後で長生きする手助けになり、さらに手術やその他の主要心臓事象からの素早い復帰を促進することができます。 翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Weiss-Faratci, Netanela et al. Optimism During Hospitalization for First Acute Myocardial Infarction and Long-Term Mortality Risk. Mayo Clinic Proceedings. 2016.
- Hernandez et al. Association of dispositional optimism with Life’s Simple 7’s Cardiovascular Health Index: results from the Hispanic Community Health Study/Study of Latinos (HCHS/SOL) Sociocultural Ancillary Study (SCAS). BMJ. 2018.
- David DiSalvo. Optimistic Thinking Gives Heart Health A Boost, Study Finds. 2018.
- Boehm JK et al. Relation between optimism and lipids in midlife. Am J Cardiol 2013
- Anthony et al. Optimism and mortality in older men and women: The rancho bernardo study. J Aging Res 2016
- Boehm JK et al. The heart’s content: the association between positive psychological well-being and cardiovascular health. Psychol Bull 2012
- Brydon Let al. Dispositional optimism and stress-induced changes in immunity and negative mood. Brain Behav Immun 2009.
- Roy et al. Association of optimism and pessimism with inflammation and hemostasis in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). Psychosom Med 2010.
- keda et al. Optimism in relation to inflammation and endothelial dysfunction in older men: the VA Normative Aging Study. Psychosom Med 2011.
- Ronaldson et al. Optimism and Recovery After Acute Coronary Syndrome: A Clinical Cohort Study. Psychosomatic Medicine. 2015.
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