ナッツの健康効果 (SQ-101)
「ナッツの高摂取は心血管疾患リスクの軽減と関連している」―ザ・ジャーナル・オブ・ニュートリション(The Journal of Nutrition)
心血管疾患は世界中の死亡および障害の主な原因の一つです。これは通常、動脈に蓄積されたプラーク、血餅リスクの向上などと関連しています。
プラークの蓄積はアテローム性動脈硬化症と呼ばれ、動脈を硬くし、詰まらせます。このプロセスは心筋への血流を減少させます。プラークの破裂は、重要な器官への血流を完全に塞いでしまう危険な血餅の形成の原因にもなり得ます。これによって心臓発作や脳卒中を引き起こすことがあります。
アテローム性動脈硬化症の発症には、軽度の慢性炎症が重要な役割を担っていると考えられています。短期であれば急性炎症は治りますが、進行中の炎症は体全体に損傷を引き起こします。残念ながら、現代の生活習慣は酸化損傷と慢性炎症を引き起こす要因に溢れています。喫煙、慢性的なストレス、肥満、栄養不足、質の悪い食生活、 運動不足、そしてもちろん年齢などは、炎症、心臓疾患、および心臓疾患を発症するリスクを著しく向上させるその他の状態を引き起こす、主なリスク要因です。
嬉しいことに、健康的な生活習慣(良い食生活、安眠、定期的な運動)によって、心血管疾患やしばしばそれに伴うリスク要因は予防することができます。例えば、食生活と生活習慣への積極的な介入は、余分な体重を減らし、糖尿病、肥満、高血圧、高いコレステロールレベルのリスク軽減に非常に役立ちます。
正しい食べ物を食べることは、心臓疾患のリスク予防に関して最も重要な対策の一つです。食べ物を食べて、体は多くの機能を実行するのに必要なエネルギーを得ます。しかし、何を食べるかで大きな違いが生じます。正しい栄養素は、炎症、感染症、疾患に対処するために体を武装します。バランスの取れた健康的な食生活はカロリーとエネルギーを供給するたけでなく、健康と活気を維持するために抗酸化物質、繊維、ビタミン、ミネラル、生物活性化合物を提供します。
この文脈において、ナッツは食生活に取り入れることのできる最高の食品の一つに見えます。ナッツを毎週たくさん食べることの健康効果を支持する科学的データは多くあります。ナッツは炎症を軽減し、体重の増加を予防し、心血管の健康に悪影響を与える多くの健康状態リスクを下げます。
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ナッツと心臓の健康
2018年の最近の研究で、様々なナッツを定期的に消費することで体重増加を予防し、また心臓にも健康効果があることが分かりました。2018年にシカゴで行われたアメリカ心臓協会の学会にて、二つの異なる研究が発表されました。
それは体重に関するナッツの役割を分析した研究で、研究者はナッツとピーナッツを食べることで長期にわたる体重増加リスクを軽減することを発見しました。様々なナッツを赤身肉、ポテトチップス、加工肉といった食品の代替にすることで、肥満や関連心臓疾患のリスクを軽減できることが明かになりました。
その研究の筆頭著者であるリウ・シャオラン氏は以下のように説明しています。「健康的な食品の少ない食事(赤身または加工肉、フレンチフライまたは甘いお菓子など)に1オンスのナッツを入れることで、成人後の緩やかな体重増加予防に役立ち、肥満に関連する心血管疾患リスクを軽減する。」 [1]
とある2017年の研究は、ナッツを食べる頻度と心臓疾患の発生の関係性について調べました。これまで行われたこのテーマの最大規模の研究とされているものでは、研究者によって、ナッツ(ピーナッツ、くるみ、木の実)の定期的な消費が冠動脈心疾患や脳卒中を含む心血管疾患リスクを下げることが分かりました。
ピーナッツは本質的には豆でありナッツ類ではないにもかかわらずその研究に含まれているのは、ピーナッツが脂肪酸や栄養プロファイルといった点で他のナッツに似ているためです。
米国心臓病学会のジャーナルに発表された研究は、32年以上にわたって210,000人近くの人の健康情報を観察しました。研究で分かった重要な発見に注目してみると、以下のようにあります。
- (週に1回かそれ以上)くるみを食べることは、心血管疾患リスクを19%減少させ、冠動脈心疾患リスクを21%下げる。
- (週に2回かそれ以上)ピーナッツを食べることは、心血管疾患リスクが13%減少したことと関連していた。また、これは冠動脈心疾患リスクを15%下げる。
- 木の実を食べることは、心血管疾患リスクを15%減、冠動脈心疾患リスクを23%減少させる。
研究は以下のように結論しています。「3つの大規模な前向きコホート研究において、あらゆる種類、および特定種のナッツの高い消費は、あらゆる心血管疾患および冠動脈心疾患との負の相関を示していた。」 [2] この研究は、マサチューセッツ州ボストンはハーバード公衆衛生大学院のマルタ・グアシュ-フェレー氏によって率いられました。
もう一つの重要な研究では、週に3回以上ナッツを消費することで心房細動リスクが18%軽減したことが分かりました。さらに、ナッツを(週に1、2回)適度に消費することは、心不全リスクの減少とも関係していたことが分かりました。そして何よりも重要なことは、ナッツを少量でも摂取することで、これらのリスクを低下させる上で大きな影響を及ぼす可能性があるということです。 [3]
その他多くのメタ解析は、ナッツの摂取は心血管疾患、あらゆる冠動脈心疾患、あらゆる脳卒中による死亡リスクを下げることを示しています。 [4-5]
事実、過去の研究では、定期的なナッツの摂取は心血管疾患リスクだけでなく、2型糖尿病、メタボリックシンドローム(代謝症候群)、異常な高コレステロールレベルといった関連リスク要因を下げることが示されています。複数の研究は、ナッツは感染症、呼吸器疾患、死亡リスクの減少と正の関連があることを示しています。ナッツは健康な加齢と記憶機能においても役立ちます。
BMCメディスンで発表されたとあるメタ解析は以下のように結論しています。「ナッツの高摂取は心血管疾患、あらゆるがんと総死亡率、呼吸器疾患・糖尿病・感染症による死亡率のリスク軽減と関連している。」 [6]
体重を減らしたい時に、ナッツは選択肢として正しいのか?
ナッツは脂肪とカロリーが豊富に含まれています。定期的にナッツを消費すると体重増加につながるのでしょうか?ナッツを日常の食生活に取り入れているのであれば、この質問は大いに納得できます。
このポッドキャスト(英語のみ)でマルタ・グアシュ氏は、ナッツがエネルギー密度の高い食品なのは事実であると説明しています。しかしながら、ナッツの定期的な消費が体重増加につながるとする明確な化学的証拠はありません。事実、ナッツの摂取は体重の低下および肥満リスクの軽減と関連しています。これはナッツが満腹感を促し、空腹時にジャンクフードや不健康なスナックを食べたくなる欲求を軽減するためである可能性があります。
2017年にヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション(欧州栄養学ジャーナル)にて発表されたとある研究では、以下のことが判明しました。「ナッツの高摂取は体重増加の軽減と関連しており、太りすぎや肥満リスクを低下する。」 [7]
いかにしてナッツは役立つのか?
ナッツには心臓に健康的な栄養素が詰まっており、これには不飽和脂肪酸、アルギニン、マグネシウムや亜鉛といったミネラル、ビタミンE、葉酸、食物繊維、生理活性物質などが含まれます。
不飽和脂肪酸(オメガ3s)
アーモンド、ピスタチオ、くるみといったナッツは、不飽和脂肪または「良い」脂肪が多く含まれています。これらの脂肪は心臓にとって非常に健康的であると考えられています。 ナッツ、とくにくるみにはオメガ3sが多く入っています。これは不飽和脂肪の一種で、鮭、サバ、マグロ、ニシンといった多脂魚にも入っています。オメガ3脂肪は心臓の健康維持のために多くの効果をもたらします。
- 心臓疾患発症の主な要因となる炎症の軽減
- 血餅の形成を軽減(実質的に抗血栓剤)
- 心臓発作を引き起こすことのある不整脈リスクを軽減
- トリグリセライドレベルの低下、HDL(高密度リポタンパク質)レベルの向上
- 動脈が詰まる速度を落とす
- 血圧を下げる
事実、オメガ3脂肪は脳の健康と機能にとても効果があります。これらの種類の脂肪は、高齢者の視力低下や失明の主因である黄斑変性を予防することでも知られています。
生物活性化合物
ナッツが総合的に健康に良い理由の一つに、ポリフェノール、トコフェロール、フィトステロールといった生物活性化合物が素晴らしい抗酸化特性と共に多く入っているからです。ポリフェノールはコレステロールを下げ、内皮機能を向上させ、血餅を形成させる血小板粘着を予防することで知られています。
アルギニン
ナッツは一酸化窒素(NO)の合成に必要なアミノ酸である、アルギニンを豊富に含んでいます。 一酸化窒素は心臓に良い分子です。血管をリラックスさせ、動脈壁をより柔軟にし、血餅の影響を受けにくくさせることで知られています。
ナッツに含まれるその他の健康的な成分
ナッツは他にも、食物繊維、葉酸、ビタミンE、カリウム、マグネシウム、その他様々な健康的な成分を含んでいます。この優れた栄養素の組み合わせのため、ナッツは心臓疾患および心臓疾患を発症しやすくするリスク要因の予防に効果があるのです。
どんな種類のナッツを食べるのが良いのか?
様々な種類のナッツ(アーモンド、くるみ、ピーナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ペカン、マカダミアナッツなど)が食事に含まれていれば、さほど気にすることはありません。しかし、くるみは特に心臓に良く、食事に含むことのできる、心臓に効果のあるナッツの一つと言われています。それはくるみには以下の特長があるためです。
- オメガ3脂肪酸の一種である、αリノレン酸(ALA)が多く入っている。
- LDL(悪玉)コレステロールおよび拡張期血圧を軽減する
- 血管の内側を覆う薄い細胞層である、内皮の機能を向上させる。この効果は、くるみに豊富に含まれているαリノレン酸、γトコフェロール、フィトステロールのためである可能性がある。 [8]
2014年にザ・ジャーナル・オブ・ニュートリションで発表されたとあるレビューで、くるみはポリフェノールを多量に含んでいることが報告されました。ジャーナルは以下のように言及しています。「くるみはβ-シトステロール、α-トコフェロール、γ-トコフェロールの源である。さらに、くるみは一般的なナッツおよびピーナッツの中で総ポリフェノール含量が最も高く、同様に選定されたナッツや種と比較しても総抗酸化物質濃度が最も高い。」 [9]
これらの驚くべき栄養プロファイルのため、ナッツは素晴らしい健康効果の数々を提供します。オメガ3脂肪、ミネラル、ビタミンE、アルギニン、生物活性化合物の豊富な源として、ナッツは体に抗酸化効果および抗炎症効果をもたらします。概して、複数の研究はナッツの効果を以下のように示しています。
- 炎症の軽減
- 細胞および組織への酸化損傷を予防
- トリグリセライドレベルの低下
- インスリン感受性の向上
- 内皮機能および構造的完全性の向上
- 減量に役立つ
- 体重増加リスクの軽減
- 感染症リスクの軽減
- 健康栄養素の供給
ナッツが含まれている食事を日常的に取ることは、心血管疾患を引き起こしかねない様々なリスク要因を長期的に緩和します。
早速ナッツを食生活に取り入れましょう。手のひらほどのナッツを週に5回以上摂取するだけで効果があります。塩味のナッツやチョコレート味のナッツは避けることが重要です。健康効果を最大限に得るために、生のナッツや煎ったナッツを選びましょう。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- American Heart Association. "Nuts for nuts? Daily serving may help control weight and benefit health." ScienceDaily. 2018
- Guasch-Ferré et al. Nut consumption and risk of cardiovascular disease. Journal of the American College of Cardiology. 2017
- Larsson et al. Nut consumption and incidence of seven cardiovascular diseases. BMJ. 2017.
- Grosso et al. Nut consumption on all-cause, cardiovascular, and cancer mortality risk: a systematic review and meta-analysis of epidemiologic studies. The American Journal of Clinical Nutrition. 2015
- Mayhew et al. A systematic review and meta-analysis of nut consumption and incident risk of CVD and all-cause mortality. British Journal of Nutrition. 2016.
- Aune et al. Nut consumption and risk of cardiovascular disease, total cancer, all-cause and cause-specific mortality: a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMC Medicine 2016.
- Heinz Freisling et al. Nut intake and 5-year changes in body weight and obesity risk in adults: results from the EPIC-PANACEA study. European Journal of Nutrition. 2017.
- Berryman et al. Acute Consumption of Walnuts and Walnut Components Differentially Affect Postprandial Lipemia, Endothelial Function, Oxidative Stress, and Cholesterol Efflux in Humans with Mild Hypercholesterolemia. The Journal of Nutrition. 2013.
- Penny M. Kris-Etherton. Walnuts Decrease Risk of Cardiovascular Disease: A Summary of Efficacy and Biologic Mechanisms. The Journal of Nutrition. 2014.
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