栄養のサポートは白斑治療に役立つのか? (SQ-82)
白斑とは皮膚の色が失なわれしまう病気で、その結果、肌が白く抜けていってしまいます。これはメラノサイトというメラニンを形成する細胞が破壊された場合に起こります。メラニンとは、肌にその色を与え、また太陽の紫外線から肌を保護する色素です。メラニンがなければ、肌は色を失なってしまうのです。
白斑の徴候と症状
白斑の主な徴候は、はっきりとした斑点の出現で、一か所に集中することもあれば、体の複数箇所に影響することもあります。斑点がどこまで広がっていくかを予測することはできません。一瞬にして広がっていく人もいれば、まったく広がらない人もいます。何年もかけて白斑が広がっていく人もいます。
白斑の徴候には以下を含みます。
- 顔、手、足、腕、唇など、とくに頻繁に太陽に曝されている部分を中心に白い斑点が出現する。また白斑は、脇、目、性器、肘、鼻、口周りにも発症する。
- 白い斑点が網膜(眼球の内側の層)に現れる
- 白斑の影響を受けた部分の若白髪
- 口や鼻の内側といった、粘膜の色素損失
白斑の原因は?
白斑の正確な原因は未だ知られていません。複数の仮説が白斑の発症と進行の説明をしていますが、研究によると、自己免疫が原因であるという説が最も有力です。これは、感染を受けやすい人の場合、色素を生成する肌の細胞であるメラノサイトが、過活動免疫系によって誤って破壊されてしまうことを示しています。
科学者たちは、白斑の発症リスクを高める可能性のある要素は、他にも複数あるとしています。
- 自己免疫疾患
- 極度のストレスや突然の外傷
- 遺伝
- 主要な感染症
- 重度の日焼け
- 特定の化学物質や毒素への暴露
- ミネラル、ビタミン不足
- 神経異常
白斑は痛みを伴わず、健康に直接脅威をもたらすことはありませんが、精神的、心理的に大きな影響をもたらすことがあります。完治することはありませんが、治療は可能で、症状を軽減することができます。従来の治療法には、メイク、経口ステロイド、外用ステロイド薬、外用免疫調節薬、光化学療法(PUVA)、光線療法(UVB)、エキシマレーザー、および外科治療の選択肢(皮膚移植、タトゥー、メラノサイト移植)もあります。
これら治療法はいつも成功するとは限らず、さらに重要な副作用を引き起こします。例えば、外用ステロイド薬は皮膚萎縮や皮膚菲薄化を引き起こす可能性があり、光化学療法は皮膚がんのリスクを高める可能性があります。
栄養サプリメントは本当に白斑制御の手助けとなるのか?
自己免疫疾患は、メラノサイトの破壊における重要なメカニズムの一つであると考えられています。この理論によれば、メラノサイトを潜在的な脅威と認識し、攻撃を始める過活動免疫系を持っている人がおり、それが色素の損失、白斑点の発症を引き起こします。
研究によれば、白斑患者は同時に存在している自己免疫疾患を少なくとも一つ持っているケースが多く[1]、それらは特に橋本甲状腺炎やバセドウ病といった、自己免疫性甲状腺炎です[2]。さらに、強皮症、乾癬、糖尿病、狼瘡(ループス)、円形脱毛症、アジソン病、関節リウマチ、悪性貧血などの人は、白斑の発症リスクが増加します。
さらに、フリーラジカルによって引き起こされる酸化ストレスも、メラノサイト破壊のもう一つの根本的な原因であると、研究は示唆しています。また、白斑で苦しんでいる人は抗酸化物質のレベルが非常に低いことが分かっています。(抗酸化物質とは、フリーラジカルを中和し、紫外線照射、汚染、有毒化学物質への角な暴露、さらには高レベルの精神的苦痛など、内的および環境的要因の両方によって引き起こされる酸化損傷を制限する物質です。)
抗酸化物質のサポートが不十分な状況下での、制御不能なフリーラジカルによる損傷は、白斑を持つ人のメラノサイトの変性の初期発病段階として知られるようになりました。[3] 最近の研究は、この症状へと悪化する際の、抗酸化物質の不均衡の役割を証拠づけています。[4]ベータカロチン、ユビキノン(CoQ10)、ビタミンE、ビタミンC、フェリチン、メタロチオネインといった、抗酸化物質レベルの減少は、白斑に冒されたメラノサイトで観察される、フリーラジカルの過剰生成をもたらす可能性があります。
この症状の影響を受ける人は、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、亜鉛、銅などの特定のビタミンレベルが異常に低いことが多々あります。これら栄養素の補充は、症状の軽減に役立つのか?免疫系を調節することができ、酸化損傷を制御する抗酸化物質および抗炎症剤として機能する栄養素は、病気の制御において大きな役割を担うことができ、白斑の症状管理において、利用可能で安全な治療法として提案されています。[5]
1. ビタミンB12 と葉酸
白斑患者は、悪性貧血やビタミンB12不足である可能性が高いといわれています。ビタミンB12と葉酸の不足は、白斑のメラノサイト破壊の要因になる可能性のあるホモシステインレベルの増加に大きく関わっています。(ビタミンB12と葉酸は、ホモシステインをメチオニンに変換して、血液中からホモシステインを排除するための重要な役割を果たします。ホモシステインは炎症を引き起こすことで知られており、アテローム性動脈硬化症、心臓疾患、認知症、さらにはアルツハイマー病の重要なバイオマーカー(生物指標化合物)であると考えられています。)
この研究は、血清ホモシステインレベルと白斑の範囲の強い関連性を示しており、さらに血中のホモシステインレベルは、白斑の範囲および活動の新たなバイオマーカーとして見なすことができるとしています。レベルの増加はビタミンB12不足と関連しているので、研究者は、「積極的な栄養補充は白斑患者にメリットがある」と結論しました。[6]
多くの研究では、ビタミンB12や葉酸の補充が白斑治療の効果を向上させることを示しています。[7][8]さらに、うつや不安といった、この症状共通の副作用の防止にもビタミンB12は役立ちます。
悪性貧血、腸疾患、体重減少手術、制酸剤の過剰摂取、メトホルミン(糖尿病薬)の長期使用など、多くの要因によって、食品および口径サプリメントを経由したビタミンB12の吸収が悪影響を受ける可能性があるので、十分に注意してください。このような場合、ビタミンB12の注射や、リポソームのB12サプリメントは、吸収の改善、および血液中のビタミンB12レベルの向上に、優れた成果を挙げます。また、葉酸とビタミンB12はそれぞれの役割を果たすために互いに依存し合っており、これら2つのビタミンを同時に摂取することも非常に重要です。
2. ビタミンD3
自己免疫疾患を持つ人は、ビタミンD3のレベルが低いことが分かっています。さらに、ビタミンDレベルの低下は、甲状腺疾患、多発性硬化症、1型糖尿病、狼瘡、関節リウマチを含む、様々な自己免疫疾患のリスクを増加させることで知られています。ここで疑問が生じます。はたして低ビタミンD状態は白斑と関連しているのか?
2017年の研究では、白斑患者のビタミンDレベルは、対照群のものよりもはるかに低いことが分かりました。また、白斑患者は血液中のインターロイキン17(IL-17)レベルが非常に高いことも報告されています。IL-17は炎症を促進するサイトカインです。研究者は、「ビタミンDは、白斑の複雑な病因の究明に貢献し得る」と結論しています。[9]
別の研究では、ビタミンDは白斑の原因に関与している様々なサイトカインのレベルを低下させることが報告されており、「ビタミンDの局所適用はメラノサイトの破壊防止に役立つ可能性がある」と結論しました。 [10]
様々なメカニズムによってビタミンDは白斑を防止することができ、以下はその一例です。
- ビタミンDは抗炎症物質として機能し、腸を含む体内の過剰炎症を軽減する。腸内の炎症、およびリーキーガット症候群は白斑の発症と関連している。
- ビタミンDは皮膚の色素沈着に関与している。
- ビタミンDはチロシナーゼ活性とメラニン形成(生成)を増加させる。メラノサイトはビタミンD受容体を含んでいる。
- ビタミンDは免疫調節特性があり、免疫系を調節する。ビタミンDは自己免疫反応を抑制し、自己免疫疾患を防止する免疫細胞である、制御性T細胞の発現と機能を促進する。一般的に制御性T細胞は、免疫系が健康な細胞と、有害な侵入者を区別するのを助ける。
3. ビタミンC
白斑患者の多くがビタミンC不足であることが分かっています。さらにビタミンCのレベルの向上は以下の症状に役立ちます。
- ビタミンCは抗酸化物質として機能し、メラノサイトの酸化損傷を軽減する。
- ビタミンCは健康な肌に必要なコラーゲンの合成に欠かせない補因子として必須。
- ビタミンCはメラニンの合成に必須。
一部の専門家は、最高の天然ビタミンC源である柑橘系の果物は色素沈着プロセスに干渉する可能性があり、高品質のビタミンCサプリメントは柑橘系果物よりも優れた選択肢であるとしています。
4. 亜鉛と銅
亜鉛は、成長と発達、免疫、生殖、脳と腸内の健康など、様々な健康面を維持するために必要不可欠なミネラルです。興味深いことに、肌には体の全亜鉛の約6%が含まれています。亜鉛のほとんどは筋肉や骨に集中しています。
白斑患者は銅と亜鉛レベルが低いことを研究が示しています。[11]この2017年の研究では、健康な被験者の亜鉛レベルと比較すると、白斑患者の亜鉛レベルが低いことが分かりました。研究者は、この重要な発見は、白斑発症における亜鉛の役割をはっきりと示すことができたと結論しました。[12]
亜鉛は、以下の働きで白斑の制御に役立ちます。[13]
- メラノサイト破壊の防止
- 体内抗酸化システムのサポート、フリーラジカルの抑制、メラノサイトの損失に大きく関わる酸化ストレスからの保護
- 特に、銅、コバルト、ニッケル、鉄、マンガン、カルシウムなど、その他の微量栄養素と共に使われる際のメラニン生成(形成)における重要な役割を担う。
5. イチョウ
2つの小規模な試験が、イチョウが白斑の治療に効果があることを示しています。2003年のプラセボ対照二重盲検比較試験で、研究者は、40mgのイチョウを一日三回摂取すると、白斑が限定的かつ広がるスペースが遅い患者のほとんどが、病気の進行が抑制されたことが分かりました。また、その患者グループの参加者中10人から、著しい、または完全な色素の再沈着がみられました。[14]
2か月間に及ぶ別の小試験では、イチョウが白斑管理に有効な役割を果たしたとの報告がなされました。この試験では、イチョウを60mg消費することで、劇的な改善が見られたとの報告されました。(例:治療は病気の進行を止め、白斑病変部の色素を再沈着し、病変面積も減少させた。)[15]
イチョウは、その強力な抗酸化、抗炎症、免疫調節特性で、白斑管理に有用であること考えられています。また、不安症状を改善し[16]、唾液中のコルチゾールレベルを軽減することでも知られています。[17]一部の患者にとって、ストレスや不安は白斑発症のトリガーであることも知られています。 さらに、イチョウは安全かつ耐容性良好なサプリメントです。
これらは、「母なる自然」は人が生き抜くために必要なものを数多く与えてくれていることを、あらためて伝えてくれています。しかしながら、人類の本性と貪欲さというものは、利益と嘘と欺瞞の前では、自然がくれた経済的な療法すらも看過してしまうのです。
翻訳者: 渡辺秀平
参考:
- Gill et al. Comorbid autoimmune diseases in patients with vitiligo: A cross-sectional study. J Am Acad Dermatol. 2016
- Baldini et al. Vitiligo and Autoimmune Thyroid Disorders. Front. Endocrinol., 27 October 2017
- Maresca et al. Increased sensitivity to peroxidative agents as a possible pathogenic factor of melanocyte damage in vitiligo. J Invest Dermatol. 1997
- Xie et al. Vitiligo: how do oxidative stress-induced autoantigens trigger autoimmunity? J Dermatol Sci. 2016.
- Cohen et al. Alternative Systemic Treatments for Vitiligo: A Review. Am J Clin Dermatol. 2015
- Sabry et al. Serum levels of homocysteine, vitamin B12, and folic acid in vitiligo. The Egyptian Journal of Dermatology and Venerology. 2014
- Agarwal et al. Study of serum levels of Vitamin B12, folic acid, and homocysteine in vitiligo. Pigment Int 2015
- Juhlin et al. Improvement of vitiligo after oral treatment with vitamin B12 and folic acid and the importance of sun exposure. Acta Derm Venereol. 1997
- Aly, D. et al. Is There a Relation between Vitamin D and Interleukin-17 in Vitiligo? A Cross-Sectional Study. Dermatology, 2017.
- AlGhamdi et al. The role of vitamin D in melanogenesis with an emphasis on vitiligo. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2013
- Zeng et al. Decreased copper and zinc in sera of Chinese vitiligo patients: a meta-analysis. J Dermatol. 2014
- Mogaddam et al. Evaluation of the serum zinc level in patients with vitiligo. Postepy Dermatol Alergol. 2017
- Bagherani et al. HYPOTHESIS: ZINC CAN BE EFFECTIVE IN TREATMENT OF VITILIGO. Indian J Dermatol. 2011
- Parsad et al. Effectiveness of oral Ginkgo biloba in treating limited, slowly spreading vitiligo. Clin Exp Dermatol. 2003
- Szczurko et al. Ginkgo biloba for the treatment of vitilgo vulgaris: an open label pilot clinical trial. BMC Complement Altern Med. 2011
- Woelk et al. Ginkgo biloba special extract EGb 761 in generalized anxiety disorder and adjustment disorder with anxious mood: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Psychiatr Res. 2007
- Jezova et al. Reduction of rise in blood pressure and cortisol release during stress by Ginkgo biloba extract (EGb 761) in healthy volunteers. J Physiol Pharmacol. 2002
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