いかにしてクルクミンは痛みを和らげるのか? (SQ-108)
痛みとは体に問題があることを示す警告で、治すために何らかの対処をすべきであることを示しています。怪我、骨折、火傷、消化不良などで感じる激しい痛みは、完治すれば消えていきます。
人によっては継続して痛みと付き合っていかなければならない場合もあります。線維筋痛症、関節炎、坐骨神経痛、偏頭痛、過敏性腸症候群などの症状を持つ人は慢性疼痛に苦しみ、これは体および心の健康に影響を与えます。このような痛みによって、仕事や人間関係、全体的な生活の質に影響がでます。
市販薬、非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド、抗うつ剤などは、その副作用にもかかわらず慢性疼痛を除去するための一次治療として頻繁に使用されています。ではクルクミンなどの天然化合物を使用するのはどうでしょうか?
クルクミンは鎮痛特性を持つ最も強力な抗炎症物質の一つであるといわれています。事実、複数の研究によると、痛みや炎症を緩和するクルクミンの特長は、処方薬や市販薬と匹敵するものであることが示されています。
今回の記事では、いかにしてクルクミンが痛みを和らげるのかについて見ていきたいと思います。
慢性疼痛と炎症
米国国立補完代替医療センターは、3~6か月間にわたって持続する痛みを慢性疼痛としています。
慢性疼痛を患うと、怪我や病気が治った後になっても体は持続的に脳に信号を送り続けます。これは動きや機能の範囲を縮小させます。さらに簡単な動きをするだけでも疲労困憊するようになってしまう場合もあります。
何が慢性疼痛を引き起こすのか?
慢性的な広範囲の痛みを引き起こす症状は複数あります。
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 線維筋痛症
- 骨関節炎および関節リウマチ、骨関節炎、腱炎
- がん
- 炎症性腸疾患
- 関節炎
- 外傷または怪我
- 頭痛および偏頭痛
- 肥満
- 椎間板ヘルニア
- 坐骨神経痛
- 糖尿病性神経障害
- 加齢
軽度の慢性炎症と痛みは密接に関連しています。何らかの形で組織が損傷や怪我を負うと炎症が始まります。免疫系は体を修復および治癒に向かわせる一連の生化学反応を引き起こします。怪我に伴って経験する痛み、赤み、腫れはすべて、体が治癒する準備が整っていることを示す徴候です。
このプロセスにおいて、免疫細胞はサイトカインやプロスタグランジンといった、複数の異なる種類のタンパク質および化学物質を放出します。これらの炎症性化学物質が痛みの信号を送ります。痛みを感じさせることであなたに怪我の存在を知らせます。慢性的な長期の炎症の場合、免疫系はこれらの炎症誘発性化学物質を持続的に放出し、強い刺激の痛み、およびさらなる赤みや腫れを同時にもたらします。
さらに悪いことに、慢性疼痛を患うことはストレスを増加させ、免疫系に悪影響をもたらし、体に炎症負担を与えます。増加する炎症や痛みの悪循環から体は抜け出せなくなってしまいます。持続的な炎症は、長年にわたって心臓疾患、糖尿病、肥満、うつ病、アルツハイマー病、骨関節炎、関節リウマチなどの慢性疾患を引き起こします。
それから何が起こるのか?
痛みをすぐさま和らげるために、ほとんどの人が抗炎症薬に手をだします。非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛剤、ステロイド、抗うつ剤、オピオイドは、多くの症状において痛みや炎症の軽減に頻繁に使用される薬の一部です。
これらの薬は激しい痛みに効果的である一方で、長期間の使用は、吐き気、めまい、眠気、胃潰瘍、心臓疾患リスクの増加、出血、免疫不全、肝損傷、腎損傷、依存症など、軽度から重度の副作用の問題を含んでいます。また、鎮痛剤を長期間使用することで体に耐性ができ、効果が低下してしまいます。
これらの合併症を考慮し、慢性疼痛の患者はより安全に痛みを管理する方法を常に探しているのです。ここでクルクミンがどんな効果をもたらすかを見てみましょう。
痛みの緩和においてクルクミンはいかにして機能するのか
サイトカイン、プロスタグランジン、核内因子カッパB(NF-κB)、その他様々な酵素などの分子は、痛みと炎症に関与しています。例えばNF-κBは、特定の遺伝子の発現を調節するタンパク質である、転写因子の一つです。NF-κBは炎症性タンパク質を作り出す遺伝子を起動させます。
同様にシクロオキシゲナーゼ(COX)は、炎症、痛み、発熱などを引き起こすことで知られるトロンボキサンやプロスタグランジンといった化学物質を生み出す酵素の一種です。生理中の痛みを伴う下腹部のけいれんは、子宮の内膜から放出されるプロスタグランジンによって引き起こされます。COXを抑制することのできる物質や薬は、体内の痛みや炎症の軽減に役立ちます。ほとんどの非ステロイド性抗炎症薬はこのようにして機能します。
COXは、COX-1、COX-2という二つの種類が存在します。これらの酵素は両方ともプロスタグランジンを作りますが、胃および腸の粘膜内層を保護し、血管内壁を保護し、血小板を活性化し、さら腎臓の機能を維持するプロスタグランジンを生成するのがCOX1です。この便利なCOX1は体内で常に生成されますが、一方でCOX2の生成は炎症の際に放出されるサイトカインによって誘発されます。
非ステロイド性抗炎症薬はCOXの合成をブロックし、そのプロセスにおいてもCOX1に影響を与えます。これが保護プロスタグランジンを軽減し、胃腸潰瘍を引き起こし、出血および腎損傷リスクを増加させます。
クルクミンは抗炎症物質の一種です。NF-κB、サイトカイン、プロスタグランジンなどの様々な分子の合成および活性をブロックすることで、痛みや炎症を軽減します。これらの分子は関節炎(関節リウマチおよび骨関節炎を含む)、生理痛、また痛みを引き起こすその他多くの症状に関与しています。調査は、サイトカインおよびCOXなどの酵素は関節に炎症を引き起こし、これが次第に軟骨や骨を破壊することを示しています。
クルクミンはこれらの炎症経路を調節し、不要な副作用なしに痛みを緩和することができます。最も重要なことに、クルクミンはCOX2酵素の活性を制限することがあげられます。これは胃潰瘍、腎損傷、心臓疾患などのリスクを軽減します。
また抗酸化物質としてクルクミンは、異常免疫活性化によって関節軟骨の劣化を引き起こす酸化ストレスを抑制します。
事実、様々な形態の関節炎治療において、一般的な抗炎症物質やイブプロフェンやジクロフェナクナトリウムといった鎮痛剤と同等、またはそれ以上の効果をクルクミンが有していることを、複数の研究が示しています。
さらに、痛みの管理においてクルクミンを使用することで得られる重要な果がもう一つあります。それは、非ステロイド性抗炎症薬によって引き起こされる副作用から、胃と腸の健康を保護するということです。クルクミンは抗酸化物質であり、薬の過剰使用によって誘発されるフリーラジカルの形成および炎症を軽減し、潰瘍のリスクを下げます。クルクミンは胃の粘液分泌を刺激し、これにより強い酸やその他の消化要素から胃壁を保護します。
2018年の前臨床および臨床研究のレビューで、クルクミンは病気による痛みの管理においてとても効果的になり得ることがわかりました。これは組織または神経損傷によって引き起こされる痛みの一種で、炎症をもたらします。レビューは以下のように結論づけています。「痛み軽減効果のメカニズムはまだはっきりと解明されていないが、クルクミンが重要な役割を果たしていることを示す有力な証拠がある。」 [1]
骨関節炎におけるクルクミン
米国関節炎財団によると、「骨関節炎(OA)は最も一般的な関節の慢性症状である」とされています。
これは関節炎の最も一般的な形態で、軟骨が壊れてしまいます。軟骨は柔軟な結合組織で、骨の間で関節を覆っています。これはクッションの役割をしており、骨端が互いに擦れるのを防ぎます。これは摩擦を起こすことなく、関節が滑らかに動くのを助けます。
年齢、日々の摩滅、肥満、怪我などは骨関節炎の主なリスク要因です。そして、骨関節炎の発症において、慢性炎症とその要素が重要な役割を果たしていることを示す有力な証拠が存在します。 [2] [3]
この病状が進行するにつれ軟骨は損失していきます。これにより骨が互いに擦れて、痛みを伴う症状が起こります。また、骨の破損をもたらします。破損した軟骨の破片は、関節および周囲の構造に炎症を引き起こします。これが免疫系を活性化させ、さらなる損傷および関節の炎症と変性を引き起こす炎症性サイトカインの放出をもたらします。
骨関節炎は、主に腰、膝、脊柱、手の関節などに影響をおよぼします。
とは言え、すべての関節に影響を与えることもあります。
骨関節炎の一般的な症状
- 関節痛
- 睡眠から目覚めた朝など、長時間休んだ後の関節硬直
- 影響を受けている関節周りの動きの縮小
- 関節および関節周りの圧痛や腫れ
いかにしてクルクミンは骨関節炎に役立つのでしょうか?
多くの臨床試験が、骨関節炎におけるクルクミンの効果および安全性を調査してきました。試験結果は、クルクミンが痛みを軽減し、身体機能およびこの症状における生活の質を向上することを示しました。さらに、クルクミンの使用は鎮痛剤の使用頻度の低下および副作用の軽減とも関連していました。 [4]
2014年、ジャーナル・オブ・クリニカル・インターヴェーションズ・イン・エイジングにて発表されたとある研究では、膝骨関節炎患者における痛みの軽減および関節機能の向上において、ウコンエキスはイブプロフェンと同様の効果があることがわかりました。さらに、一日1200mgのイブプロフェン摂取を受けていたグループは、腹痛や不快感といった症状をより多く経験していました。 [5]
2018年のとある研究は、クルクミンとボスウェリアの組み合わせは骨関節炎治療に非常に効果的な可能性があると示しています。ボスウェリアエキスはボスウェリアセラータの木から抽出されます。クルクミン同様、ボスウェリアも強力な抗炎症物質であり、骨関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患といった症状の緩和に有用であることがわかっています。病状の悪化および骨関節炎の進行に関連している炎症経路の調節に、これらの二つの成分は相乗的に機能することで知られています。 [6]
関節リウマチにおけるクルクミン
関節リウマチは自己免疫疾患の一種であり、関節や腱の内面を覆う膜である滑膜を、体の免疫系が攻撃し、炎症を引き起こします。滑膜は、動きの最中に軟骨およびその他の組織を潤滑・保護する滑液を作り出します。
病状が進行するにつれ、炎症を起こした滑膜は炎症性化学物質を放出し、これはやがて軟骨、骨、その他の組織を破壊します。これは痛み、および関節の変形を引き起こします。通常関節リウマチは体の両側の同じ関節に影響を与えます。
関節リウマチは、一般的に指、手首、足、足首、膝、肘の関節に影響を与えます。しかし、損傷を与えるのは関節だけに留まりません。関節リウマチと関連している慢性炎症は、呼吸系、眼、腎臓、血管、心臓にも損傷を与えるのです。
関節リウマチの一般的な症状
- 関節痛。朝やしばらく運動をせずにいた後は酷く痛む
- 影響が出ている関節周りの腫れ、熱、赤み
- 硬直。朝やしばらく運動をせずにいた後はより症状が重い
- 運動機能障害
- 疲労およびエネルギーレベルの低下
- 発熱
- 食欲不振
- 体重減少
- ドライアイ、目の充血
- 呼吸困難
クルクミンは関節リウマチにどのように役立つ可能性があるのでしょうか?
関節リウマチは完治しません。関節リウマチに対する治療はすべて、痛みや炎症といった症状の緩和になります。
とある予備臨床研究では、クルクミンは活動性関節リウマチ患者における関節の圧痛および腫れを軽減する能力でジクロフェナクよりも勝っている、ということが示されました。さらに、クルクミンにはいかなる副作用もみられませんでした。
ジクロフェナクは、関節リウマチ、痛風、肉離れ、月経痛、偏頭痛といった、痛みを伴う炎症症状の治療によく使用される非ステロイド性抗炎症薬です。これは心臓や胃壁への損傷と関連しており、心臓発作、血餅、胸やけ、潰瘍などのリスクが増加します。
研究者は以下のように記述しています。「活動性関節リウマチ患者におけるクルクミン治療の安全性および優位性を示す証拠を、私たちの研究によって初めて提供することになった。」 [7]
月経前症候群(PMS)におけるクルクミン
月経前症候群症状は、特定ホルモンの変化、および子宮の細胞によるプロスタグランジンE2の生成と関連しています。プロスタグランジンは子宮を収縮させるため、内膜から流血することがあります。高いレベルのプロスタグランジンは強い子宮けいれんを引き起こすだけでなく、めまい、嘔吐、頭痛、さらには下痢といった症状をもたらします。
COX2酵素が痛みをもたらし、プロスタグランジンを誘発する炎症を引き起こしていることはご存知の通りです。クルクミンはこれらの酵素や分子をターゲットとし、炎症性化学物質のレベルを軽減します。抗炎症ポリフェノールも、月経前症候群の症状と関連しているいくつかの神経伝達物質を調節します。
とあるランダム化二重盲プラセボ対照試験は、クルクミンが月経前症候群症状の重篤度をいかにして低下することができるかを示しました。以下のように結論しています。「我々の試験結果によって、月経前症候群症状の重篤度軽減におけるクルクミンの有益な効果が初めて示された。これはクルクミンの神経伝達物質および抗炎症効果の調節によって治療されたものであると思われる。」 [8]
クルクミンとその他の健康状態
クルクミンは、炎症、痛み、酸化損傷の軽減に驚くほど効果があるため、この天然化合物は心臓疾患リスクを低下させ、脳の早期老化および炎症を予防することがわかっています。
クルクミンサプリメントを使用する
クルクミンサプリメントは慢性疼痛の管理に使用することができます。しかし体にあまり効果的に吸収されません。この問題は、ピペリンと健康的な脂肪と一緒にサプリメントを摂取するか、リポソームクルクミンを使用することで解決することができます。
副作用はあるのか?
クルクミンサプリメントは非常に安全に使用することができます。しかし用法を誤ると、皮膚発疹、吐き気、下痢といった副作用が出てしまう方もいらっしゃいます。
以下に該当する方は、クルクミンサプリメントを摂取すべきではありません。
- 妊娠中および授乳中の女性
- お子さま
- ワーファリンなどの血液希釈剤を摂取している方
- 胆嚢疾患または腎臓結石を患っている方
ストレスレベルを下げ、十分な睡眠を取り、定期的に運動をして、健康的な自然食品を摂取することで、痛みや炎症を軽減することができます。砂糖、精製炭水化物、加工食品といった、炎症を促進する食品を完全に避けることもまた、とても重要です。クルクミンサプリメントをこの抗炎症療法に追加することは、痛みを管理するには素晴らしいアイデアです。現在の処方箋医薬品に対する補助薬として使うことで、最高の結果を得ることができるでしょう。マグネシウムやビタミンDサプリメントもまた、多くの病気における慢性疼痛の軽減に役立ちます。こちらの「ビタミンDは慢性疼痛と線維筋痛症に有効なのか?」という記事をお読みいただければ、痛みの軽減における日照ビタミンの役割について知ることができます。
毎回お伝えしていますが、無農薬・無重金属の高品質なクルクミンサプリメントの購入を私たちはおすすめします。そして、クルクミンやその他のサプリメントを摂取する前に、医療専門家へ相談することを忘れないでください。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Sun et al. Role of curcumin in the management of pathological pain. Phytomedicine. 2018
- Rahmati et al. Inflammatory mediators in osteoarthritis: A critical review of the state-of-the-art, current prospects, and future challenges. Bone. 2016
- Kalaitzoglou et al. Innate Immune Responses and Osteoarthritis. Curr Rheumatol Rep. 2017
- Chin KY et al. The spice for joint inflammation: anti-inflammatory role of curcumin in treating osteoarthritis. Drug Des Devel Ther. 2016
- V Kuptniratsaikul et al. Efficacy and safety of Curcuma domestica extracts compared with ibuprofen in patients with knee osteoarthritis: a multicenter study. Clin Interv Aging. 2014
- Bannuru et al. Efficacy of curcumin and Boswellia for knee osteoarthritis: Systematic review and meta-analysis. Semin Arthritis Rheum. 2018
- Chandran et al. A randomized, pilot study to assess the efficacy and safety of curcumin in patients with active rheumatoid arthritis. Phytother Res. 2012
- Khayat et al. Curcumin attenuates severity of premenstrual syndrome symptoms: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Complement Ther Med. 2015
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