クルクミンと心臓の健康 (SQ-106)
最近、クルクミンとその健康効果が話題になっています。これはウコン(ターメリック)に含まれている生物活性化合物の一種です。ウコンは典型的な黄色い香辛料で、色や風味を与えるために多くのインドカレーに入っています。
アーユルヴェーダ医学において、ウコン根は強力な薬草として広く知られています。アーユルヴェーダの医者たちは、(関節痛、消化不良、肝機能不良など)多くの症状を癒して体を修復し、さらに(循環系、免疫系、心血管系など)多くの重要な構体系をサポートするために、この金のハーブを何千年にもわたって使用しています。
ウコンにはクルクミノイドという総称で知られる、その他の活性化合物も含まれています。これらのうち、恐らく現在までに最も幅広く研究されているのがクルクミンです。多くの研究がその薬効成分の調査を行っており、そのほとんどが、特に慢性炎症から引き起こされる多くの症状における、クルクミンの治療的役割を証明しています。
これは、クルクミンと心臓の健康の関係を提示しています。クルクミンが心臓疾患のリスクを下げ、心臓の健康を強化する天然のサプリメントとうたわれている主な理由である、炎症の制御におけるその効果を多くの良質な研究が支持しています。
心臓疾患における炎症の役割
調査では、心血管疾患を含む多くの病気の発症における主要な役割を慢性炎症が担っていると示唆されています。
短期的に見れば、急性炎症は体が自身を守り、修復するうえでの重要なプロセスの一つです。これは体が感染症と闘い、怪我を治癒するのを促進します。免疫系が外部要因に反応する際、痛み、赤み、腫れといった炎症の明確な徴候が起こります。これは、免疫細胞によって分泌される様々な化学物質、タンパク質、ホルモンの間で生じる生化学的な動きによるものです。不快ではありますが、病原体を破壊し、傷ついた体を治癒・修復するためにこの免疫反応は必要なのです。
その名が示す通り、この種類の炎症およびその症状は長続きせず、免疫系がその要因をしのぐ働きを見せ始めると消滅します。問題は、炎症が制御できなくなった時に起こります。
いくつかの要因は免疫系を常に活性化させ、化学物質を放出し、体内に炎症を増加させる経路を活性化します。これは、怪我または損傷を細胞や組織に引き起こす作用因子に体が接し続けると起こります。
ストレス、喫煙、不健康な食生活、薬の過剰使用、睡眠不足、過剰なアルコール摂取、病原菌・病原体・農薬・重金属・化学物質への連続暴露といった要因は、体内に過剰なフリーラジカルを生成し、体に損傷を与えます。これらの分子は細胞およびその脂質、DNAおよびミトコンドリアに酸化損傷を引き起こし、その過程においてそれらの構造、安定性、機能を傷つけます。この混乱により体内の酸化ストレスおよび炎症性ストレスが増加し、これは今日私たちが直面している多くの健康問題と関連しています。
動脈における低密度リポタンパク質(LDL(悪玉)コレステロール)への酸化損傷は、アテローム性動脈硬化症(動脈壁にプラークが蓄積してしまう症状)発症の重要な原因の一つであると考えられています。これによって動脈が硬く、狭くなり、器官への血流が減少し、心臓発作、脳卒中、末梢動脈疾患などのリスクを増加させます。
残念ながら現代の生活習慣はこれらの要因に溢れており、軽度の炎症が起こる最悪の状況を引き寄せています。しかし幸いなことに、第一線で活躍する医者および栄養士たちは、心臓疾患を治療する中でこのミッシングリンクを発見し、体内の炎症を軽減する食生活や生活習慣の介入を強調しているのです。
抗酸化物質サプリメントの摂取も食生活の改善に含まれ、これは炎症の軽減、心臓の健康保護だけでなく、心血管の健康に悪影響を与える状態のリスクをも軽減します。クルクミンはここで役立つのです。
クルクミンが持つ「抗酸化、抗炎症、抗菌、化学予防」特性には、信頼の置ける科学的証拠があります。
クルクミンは酸化損傷および炎症を軽減する
クルクミンは強力な抗酸化物質であり、フリーラジカルを除去し、体を酸化損傷から保護します。それ自体が強力な抗酸化物質である一方、クルクミンは体内の抗酸化酵素レベルも向上させます。
またクルクミンは頼りになる抗炎症物質でもあり、様々な働きで炎症を軽減します。炎症を促進する様々なタンパク質、酵素、分子をブロックするのです。例えば、クルクミンはシクロオキシゲナーゼ酵素の生成および活性の両方を防止します。これらの酵素は炎症、痛み、発熱を引き起こすプロスタグランジンといった化学物質を生成します。
クルクミンは 核内因子カッパBという、炎症誘発分子を生成する遺伝子を作動させる分子をブロックします。 (痛みや炎症と関連している)関節炎症状の緩和において、クルクミンは、イブプロフェンやジクロフェナクナトリウムといった非ステロイド性抗炎症薬と同様の効果をもたらす可能性があると調査は示しています。 [1] 従来の非ステロイド性抗炎症薬も、シクロオキシゲナーゼ酵素や核内因子カッパBシグナル経路をブロックして体内の痛みや炎症を軽減しますが、長期間摂取すると消化管や心血管系に重い損傷を与えます。
その抗酸化作用と抗炎症作用は、クルクミンが慢性炎症からくる様々な健康状態の管理に有効なサプリメントになり得る理由です。多くの臨床試験によって、クルクミンが安全かつ耐容性良好で、多くの種類の慢性病に有効であることがわかっています。クルクミンは「がん、糖尿病、肥満、心血管疾患、肺疾患、神経疾患、自己免疫疾患を含む、様々な慢性疾患に有効であることが示されている」としています。 [2]
クルクミンは内皮機能を向上させる
内皮機能不全と心臓疾患は強く関連しています。内皮は血管の内側を覆っている薄い膜です。健康な内皮の細胞は酵素および以下を含む数多くの重要な機能を調節する分子を放出します。
- 血管の収縮および弛緩。これにより様々な組織への血流が左右される
- 酸化LDL(低密度リポタンパク質)粒子および血流の中にあるその他の有害物質から血管を保護
- 血液凝固
これらすべての機能は血管の健康および機能を維持します。内皮機能不全は動脈を弱化します。酸化LDL粒子とその他の毒素は脆弱な血管に容易く侵入し、そこに居座って、プラークの蓄積と炎症を引き起こす免疫反応を誘発します。内皮機能不全もまた、動脈の異常収縮を引き起こし、異常血圧をもたらします。
複数の研究は、クルクミンが内皮機能を向上させることを示しています。2017年のとあるレビューは以下のように結論しています。「クルクミンは内皮機能を向上すると考えられているが、内皮機能不全に対するクルクミンの治療効果に関与する、正確なメカニズムおよびバイオマーカー(生物指標化合物)を明らかにするためにはさらなる調査が必要である。」 [3]
とあるランダム化比較二重盲並行プロスペクティブ研究は、クルクミン補給が健康な成人の内皮機能を向上させたと示しています。この研究では59人の若い健康な成人に、プラセボ(偽薬)としてクルクミンを50mgまたは200mg、8週間にわたって摂取してもらいました。50mgの摂取でも内皮機能は向上しましたが、200mgの摂取はさらに良い、有意義な結果をもたらしました。 [4]
別の研究は、閉経後女性の内皮機能に対するクルクミンの効果を調査しました。内皮の健康は年齢と共に衰えていき、高齢者は心血管疾患のリスクが増加します。この研究で、クルクミンと有酸素運動の両方が加齢による内皮機能の低下を防ぐことが分かりました。これは、内皮機能の向上においてクルクミンに運動と同様の効果があることを示しています。 [5]
多くの研究が、クルクミンは炎症を抑制し、酸化損傷を軽減し、さらに内皮から放出される重要なシグナリング分子である一酸化窒素(NO)のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を増加させることで内皮機能を向上させると示唆しています。一酸化窒素は、血管の拡張調節や動脈の異常収縮の予防といった様々な特性を介して血管の健康を維持します。
クルクミンはインスリン抵抗性を向上させ2型糖尿病リスクを軽減する
高血糖値、インスリン抵抗性、肥満といった要因は、それのみで心臓疾患リスクを向上させます。
2型糖尿病では、血糖値が高すぎることで大血管や微小血管が損傷し、心血管疾患やその他の合併症をもたらします。
インスリン抵抗性(IR)は細胞がインスリンへの耐性を持ってしまう状態です。インスリン抵抗性は内皮の機能を劣化させます。内皮機能不全はご存知の通り、アテローム性動脈硬化症、高血圧、冠状動脈疾患などを引き起こします。インスリン抵抗性もまた、メタボリックシンドローム(代謝症候群)、糖尿病前症、2型糖尿病の発症率を高め、動脈にさらなる損傷と炎症を引き起こします。これは心臓にとって悪い知らせです。
酸化ストレス、炎症、肥満、インスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症および進行においてはっきりした役割を担っていると考えられています。クルクミンはこれらの根本的な要因のリスクを軽減します。 [6]
タイで行われたとある研究では、クルクミンが糖尿病前症患者の2型糖尿病発症リスクを著しく低下させたことが分かりました。この研究は、クルクミンが膵臓のベータ細胞を酸化損傷から保護することでその機能が改善する可能性があると報告しています。ベータ細胞はインスリンを放出し、インスリンは血液循環において使用可能なグルコース(ブドウ糖)を細胞が吸収するのを促進します。
この研究は以下のように結論しています。「9か月におよぶ糖尿病前症患者たちへのクルクミン投与によって、後に2型糖尿病を発症した患者の数が著しく低下した。さらに、クルクミン治療はベータ細胞の機能全体を向上させたと思われる。この研究は、糖尿病前症患者へのクルクミン投与が効果的である可能性を証明した。」 [7]
要旨
クルクミンは以下の作用によって心保護効果をもたらします。
- フリーラジカルを除去し酸化損傷を軽減する
- 抗酸化酵素のレベルおよび活性を向上させる。これにより、体の抗酸化作用がさらに強化される
- 経路、および体内に炎症性環境を生み出す酵素をブロックすることで炎症を軽減する
- 酸化損傷を軽減し、血管拡張および血圧調節に役立つ分子である一酸化窒素の生成を促すことで内皮機能を向上させる
- 細胞のインスリン感受性を向上させ、血糖値を下げ、ベータ細胞を酸化損傷から保護することで2型糖尿病リスクを下げる
この抗酸化力および抗炎症力は心臓の健康を保護するだけでなく、関連リスク要因を低下させます。また、クルクミンは以下にも効果的であることがわかっています。
- 関節炎(骨関節炎および関節リウマチ)における痛みおよび炎症の軽減
- 放射線被曝に対する保護
- 肝障害
- 体重減少
- アルツハイマー病、うつ病、脳炎
- 化学療法の効能の向上
クルクミンはがん患者にも役立つのでしょうか?複数の予備研究が、クルクミンががん細胞の増殖・拡散を阻止する可能性があることを示唆しています。最も有効な特徴の一つに、クルクミンが体内の炎症を軽減することが挙げられます。これは主に、クルクミンが多くの酵素および痛みや炎症を誘発するシグナリング分子をブロックするためです。またクルクミンはがん細胞を特定・破壊する、免疫系の生まれ持った機能をサポートします。
複数の化学療法剤の効果を向上させるその能力は、おそらくクルクミンの最も優れている特長であると言えるでしょう。 [8] クルクミンは通常これらの薬に伴う副作用を軽減し、がん細胞を化学療法に対してより影響を受けやすくすることができます。
さらに、放射線療法によって引き起こされる損傷を軽減することができます。例えば、とある研究は、クルクミンが乳がん患者における放射線療法による肌への損傷を軽減することを示しています。 [9] 放射線療法を受けている多くの患者は、放射線皮膚炎と呼ばれる、肌の乾燥や赤みまたは皮剥などに苦しむため、これは重要な効果となります。
クルクミンサプリメントで一番効果のあるものはどれか?
クルクミンの問題は、水に溶けにくく、腸に吸収されにくいことです。また代謝が早く、体内から急速に排除されてしまいます。これはすなわち、クルクミンは血液循環に長く留まらず、基本的に意図された組織に効果的に届くことはないということです。これらすべての特質は、クルクミンサプリメントの有用性を制限していまいます。
クルクミンサプリメントを、脂肪の豊富な食生活にピペリンと併せて摂取することで、吸収の増加に効果がある可能性があります。バイオアベイラビリティの問題に対処する別の方法として、リポソームクルクミンサプリメントの摂取があります。リポソームサプリメントは、栄養素やクルクミンなどの化合物のバイオアベイラビリティ改善において、非常に効果的です。これは細胞による吸収をより良くします。
多くの臨床試験が心臓および健康全体に対するクルクミンの効果を実証しています。しかし、コレステロールレベルの低下、糖尿病の管理、がん治療などを目的とした定期投薬を行っている場合、それらを中止することは推奨しません。クルクミンは補助療法としての使用が最適であり、サプリメントとして通常の薬と併せて摂取します。重金属の混入を避けるためにも、信頼のおけるサプリメント製品を必ず購入してください。
クルクミンサプリメントの摂取はリスクがまったくないとは言い切れません。特に血液希釈剤といったその他の薬を摂取している場合は注意が必要です。クルクミンと相互作用する可能性のある薬も存在します。一般的にクルクミンは安全であると考えられていますが、吐き気や皮膚発疹といった副作用が起こる可能性もあります。したがって、クルクミンサプリメントの摂取で得られる効果、およびあなたにとって何が一番相応しいのかを、医師や健康専門家に相談するのが良いでしょう。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Daily et al. Efficacy of Turmeric Extracts and Curcumin for Alleviating the Symptoms of Joint Arthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. J Med Food. 2016
- Kunnumakkara et al. Curcumin, the golden nutraceutical: multitargeting for multiple chronic diseases. Br J Pharmacol. 2017
- Karimian MS et al. Curcumin and Endothelial Function: Evidence and Mechanisms of Protective Effects. Curr Pharm Des. 2017
- Oliver et al. Novel Form of Curcumin Improves Endothelial Function in Young, Healthy Individuals: A Double-Blind Placebo Controlled Study. Journal of Nutrition and Metabolism. 2016.
- Akazawa et al. Curcumin ingestion and exercise training improve vascular endothelial function in postmenopausal women. Nutrition Research. 2012.
- Ghorbani et al. Anti-Hyperglycemic and Insulin Sensitizer Effects of Turmeric and Its Principle Constituent Curcumin. Int J Endocrinol Metab. 2014
- Chuengsamarn et al . Curcumin Extract for Prevention of Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2012.
- Kumar et al. Molecular mechanisms underlying chemopreventive potential of curcumin: current challenges and future perspectives. Life Sciences. 2016.
- Ryan et al. Curcumin for radiation dermatitis: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial of thirty breast cancer patients. Radiation Research. 2013.
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