アダプトゲンハーブでホルモンバランスを回復 (SQ-102)
アダプトゲンハーブが最近注目の話題なようです。ハーブが持つ体への抗ストレス作用がその主な理由です。アダプトゲンをスムージーに入れたり、それでお茶を作ったりすることを推奨する保健専門家もいます。
これらのユニークなハーブは西洋では新しいかもしれませんが、中国伝統医学やアーユルヴェーダ医学の医者たちには、複数の効果によって体を若返らせ、調整し、治癒する「総合強壮剤」として何世紀にもわたって使用されてきました。
霊芝、アマチャヅル、朝鮮人参、アシュワガンダ、マカ、イワベンケイ、冬虫夏草…これらはすべて、体がストレスに「アダプト(適応)」するのを促進する能力で特に知られている、アダプトゲンハーブの一例です。また、これらの植物および薬草は疲労と闘い、免疫を向上させ、エネルギーを増幅させ、さらに最も重要なことに、体が中心点を見つけ全体的なバランスを取り戻す手助けをするのに使用されます。
長期間のストレスは副腎不全と関連しており、これは特にホルモンの不均衡へとつながります。そして、これはアダプトゲンが非常に役立つ分野の一つです。今回の記事では、アダプトゲンがいかにしてホルモンバランスと健康の回復に役立つのかを詳しく解説していきたいと思いますが、まずはアダプトゲンとは一体何なのか、どのように機能するのかを簡単に見ていきましょう。
アダプトゲンとは何か?
アダプトゲンは「生物学的応答調節物質」とも呼ばれています。4千種類のハーブの中でたった一つだけが本物のアダプトゲンに部類されます。アダプトゲンが他の薬草と一線を画すのは、いくつかのユニークな特徴のためです。例えばアダプトゲンは以下のような特徴があります。
- 体をストレスにより適応させるよう促進する
- 非特異性で、複数の器官系の機能を正常化する
- 非中毒性で、副作用がない
アダプトゲンの最も重要な特質は、一つの特定の結果をターゲットにしていないということです。これらのハーブはその作用において非特異性です。すなわち体が何を必要としているのかを見つけ出すのに優れており、その方向で効果を発揮するのです。このようにしてアダプトゲンはバランスと調和の実現に役立ちます。
もう一つの特質は、これらのハーブは、ストレスに対処し、日々の疲労困憊(特にストレスに起因するもの)を自己修復する人が生まれ持った能力を強化することです。すべてのストレスが解消されるわけではありませんが、アダプトゲンによって損害も副作用も少なくストレスに対処できるようになります。
では実際にアダプトゲンはどのように機能するのか?
これらの驚くべきハーブは、視床下部-下垂体-副腎系(HPA)および交感神経副腎系(SAS)を調節します。なにやら大袈裟な名前ですが、こう考えてみましょう。これら二つの連絡網は、内分泌系(ホルモン)、免疫系、神経系をカバーします。そしてご存知の通りこれらすべては相互につながっており、主にストレスへの反応を担っています。
(絶えずストレスを感じることで起こる)HPAとSASの過剰活性化は、副腎がさらなるストレスホルモンを分泌する誘因となり得ます。これは副腎疲労につながることがあります。酷使されたHPA軸は免疫系も活性化させ、炎症性タンパク質と化学物質を放出します。
そして、ストレスの原因は問題ではありません。ストレスとは単純な響きに聞こえるかもしれませんが、そう簡単に説明できるものではないのです。これは心理学的ともいえます。財政問題、人間関係の誤り、仕事のプレッシャー、病気の子供の介護などから来る心配や不安。そして私たちの多くはこういった感情的なストレスに非常に馴染みがあります。
しかし、疲労、長期にわたる不規則な睡眠パターン、不健康な食生活、化学物質・放射能・汚染物質・その他の毒素への暴露など、物理的および環境的要因から生じるものにもなり得ます。慢性的な感染症や疾患も体にさらなるストレスを与えます。
長期にわたるストレスはホルモンに悪影響を及ぼすだけでなく、直接的または間接的にホルモン機能に影響をあたえる数々の健康問題を引き起こすことがあります。またストレスは、免疫不全、炎症、胃腸潰瘍、リーキーガット症候群を引き起こすだけでなく、うつ病、パニック障害、肥満、心臓疾患、甲状腺不均衡、がん、さらには早期死亡のリスク増加をも引き起こすことがあります。 ストレスは、線維筋痛症や慢性疼痛といった症状とも関連しています。
アダプトゲンハーブとホルモンバランス
ホルモンバランスの回復におけるアダプトゲンの役割を掘り下げていく前に、ホルモンの調子が狂う理由は「無数」あるということを理解しておきましょう。アダプトゲンはホルモンを整えるのに役立ちますが、これは総合的な戦略の一部にしかなり得ません。正確な原因を特定し、それを取り除くか、その根本的な原因に適切に対処するために対策を講じる必要もあります。
ホルモンの健康に関しては、ストレスは一番の敵です。またこれは、自分の居る環境に存在するストレス要因が噴出した際、それに対処する体制が副腎と免疫系に整っていないということを明白に示す指標でもあり、副腎疲労へとつながり、その後ホルモンに被害をもたらします。
質の悪い食生活、長時間労働、運動不足などと併せて、ホルモンレベルの低下にもつながる他の要素も存在します。
ホルモンの不均衡の考えられる原因
- 慢性的なストレス
- 糖尿病、アジソン病といった特定の健康状態
- 不健康な食生活
- 妊娠
- 閉経周辺期
- 甲状腺機能不全
- 経口避妊薬およびその他のホルモン避妊薬の使用
- ステロイドの長期使用
- 睡眠不足
- 毒素、産業汚染物質、化学物質への暴露
- 飲料水に含まれる薬や抗生物質
- 低品質プラスチックの使用
ホルモンの不均衡の兆候とは?
- イライラ、不安、怒りっぽくなる
- うつ病
- 気分にムラがあったり、明確な理由もなく泣き続ける
- 眠れない
- 説明できない疲労感、低いエネルギーレベル
- ほてる
- 痛みの伴う月経前症候群
- 不規則な、または極度に痛みを伴う月経
- 月経停止
- 不妊症
- 脱毛
- 性欲の低下
- 消化不良、便秘、下痢
- 腟乾燥
- (女性の)顔の毛が濃い(多毛症)
- 脆弱骨
- 乳房の圧痛
- 頭痛および偏頭痛
- 食欲の変化
- 顔の腫れおよび満月様顔貌(ムーンフェイス)
月経周期または更年期の様々な段階において、これら症状のいくつかを経験することは珍しいことではありません。原因を特定し、ホルモンレベルを確認するために、医者に相談しましょう。結果が不十分の場合はホルモンの不均衡を示していますが、ここでアダプトゲンハーブが役に立ちます。
アダプトゲンは主に視床下部-下垂体-副腎系(HPA)を調節することによって機能するため、副腎の健康をサポートおよび強化し、体をストレスに適応する手助けをします。(ストレスはホルモンの不均衡の主な原因の一つです。)
アダプトゲンがストレスの管理に役立つ重要なメカニズムの一つは、ストレスホルモンの一種であるコルチゾールのバランスを調節することです。コルチゾールは厳密には悪いものではありませんが、体内において数多くの重要な役割を果たしていることは間違いありません。例えば、迅速に決断をしなければならない、特にストレスが溜まる状況の中で、ストレスに対して健康的な反応をし、能動的かつ注意を怠らないようにするために、コルチゾールは必要になります。
しかし、コルチゾールが過剰に血流を流れるのはあまり良いものではありません。これは、高血圧、高血糖値、代謝障害、不安、甲状腺不均衡、うつ病、過度の体重増加などを引き起こしかねません。
アダプトゲンハーブはコルチゾールレベルを調節し、これらすべての副作用を管理するのに役立ちます。
さらにアダプトゲンは、インスリン、甲状腺、テストステロンといった様々なホルモンに対する調整効果も持っています。多くのアダプトゲンが、男性不妊、性欲、インスリン感受性、甲状腺機能の改善において役に立つことがあるのはそのためです。
事実、アダプトゲンという言葉は総称であるとも言えます。身体的、科学的、代謝的、環境的ストレスに体が対処する手助けをするために、その他多くの方法でアダプトゲンは機能します。例えば、ほとんどのアダプトゲンは、これらのストレス要因を管理し、酸化ストレスと闘い、炎症を軽減するために必要な適応エネルギーを与えるミネラル、ビタミン、生物活性が豊富に含まれており、HPA軸や特に副腎に掛かる負担を大きく減らします。これは、厳しく変化する環境を快適に過ごすために必要なものです。
アダプトゲンハーブのその他の効果
神経系および免疫系に対する正常化作用を介すことで、ホルモンバランスを正す他にも、アダプトゲンはその他多くの健康効果を発揮します。
- 神経系を落ち着かせる
- 疲労を軽減し、エネルギーレベルを向上させる
- 免疫機能の強化
- 精神的持久力の向上
- 体の抗酸化状態の向上
- 精神の明晰さ、集中力をもたらす
これらすべての健康効果を得るのに役立つ、多くのハーブが存在します。
ホーリーバジル(オシマム・テヌイフロラム)
ホーリーバジルはアーユルヴェーダにおいて最も崇高なハーブの一つです。近代の調査により、ホーリーバジルが持つアダプトゲンとしての多くの効果が確認されています。ホーリーバジルは身体的、感情的ストレスに対する体の自然反応を高めます。最も重要なことは、ホーリーバジルはすべてのストレスを軽減することが判明しているということです。これには、代謝ストレス(血糖値および血圧に与える好影響を介する)、化学的ストレス(産業汚染物質や重金属から生じる)、身体的ストレスも含まれます。さらに、器官を風邪や過度の騒音から保護することも示されています。 [1]
アシュワガンダ(ウィタニア・ソムニフェラ)
非常によく知られた薬草であるアシュワガンダは、もはや説明の必要はないでしょう。アーユルヴェーダの医者たちによって使用された最も重要なハーブの一つであり、「インドの朝鮮人参」としても知られています。コルチゾールなどのストレスホルモンのレベルを調節し、さらに慢性的にストレスを感じている人の症状を改善します。
マカ(レピディウム・メイェニ)
「ペルーの朝鮮人参」とも呼ばれているマカは、副腎疲労の症状を和らげることで知られています。マカは体力、全体のエネルギー、性欲を向上させます。
アマチャヅル(ギノステマ・ペンタフィルム)
アマチャヅル(「不死のハーブ」)は健康全体と生活の質を向上させる強力なアダプトゲンの一つです。炎症を軽減し、細胞の早期老化を予防し、しばしば加齢と関連している慢性疾患リスクを下げることができます。アダプトゲンおよび強力な抗酸化物質として、アマチャヅルは体のストレス反応を向上させます。
すべての器官系の機能を安定させ、ホルモンバランスを含む体の全体的なホメオスタシスを作り出します。
他のアダプトゲン同様、アマチャヅルは以下のような機能を持ちます。
- コルチゾールなどのストレス ホルモンレベルを下げる
- 副腎の機能と健康をサポート
- 神経を落ち着かせ、眠っている神経系を元気にする
- 疲労を軽減し、エネルギーレベルを増幅させる
- 免疫機能をサポート
- 代謝を調節するため、体重の増減両方をサポートする
アマチャヅルは、減量に役立つ [2] 、デトックス、インスリン感受性の向上 [3] 、喘息および気管支炎の治療、膀胱の炎症軽減 [4] を含む、その他数多くの効果を与えてくれます。さらにアマチャヅルは、神経系を落ち着かせることでより良い睡眠を促し、不安を軽減します。ホルモンの健康および安定性に関して言えば、健康な睡眠(夜に8時間かそれ以上の連続睡眠)の重要性を見落とすことはできません。
霊芝(ガノデルマ・ルシダム)
マンネンタケとも呼ばれる霊芝も、特に免疫系を調節するその能力で知られる強力なアダプトゲンです。ストレスの対処に役立ち、慢性的なストレス、ホルモンの不均衡、弱まった免疫などによって誘発した不安定性を正します。
冬虫夏草
冬虫夏草は基本的には寄生菌の一種であり、またアダプトゲンとも考えられています。複数の予備研究は、運動能力の向上、炎症の軽減、免疫力の増加において、冬虫夏草は心強い仲間になる可能性があることを明らかにしました。
これらすべてのハーブは独自の生物活性化合物を有しており、それぞれ異なる健康効果があります。例えば、マカにはマカアミド、アマチャヅルにはジペノサイドと呼ばれるサポニンが含まれています。多糖類(β-D-グルカン)とトリテルペン(ガノデル酸)は霊芝に含まれている二つの重要な生物活性です。
これらの化合物はそのアダプトゲンだけでなく、抗炎症作用や抗酸化作用も担っています。しかし、これらすべてのハーブおよび根には一つだけ共通していることがあります。これらは体の平衡感覚を生み出し、体をすべてのストレスに強くします。
概して、アダプトゲンハーブは体のストレス反応を以下の効果によって向上させます。
- ホルモンの健康および機能を回復させる
- エネルギーおよび持久力全体を向上させる
- 免疫の健康をサポートし、感染症、アレルギー、疾患リスクを下げる
- 精神的・身体的持久性を向上させる
- これは酸化損傷および炎症を軽減する
- 微量栄養素の蓄積を向上させる
覚えておいていただきたいのが、効果が現れ始めるまで数日から数週間、または数か月かかることもあるということです。これはあなたの健康状態に依ります。そしてさらに重要なことは、アダプトゲンを日々の健康的な食生活に追加することは、ストレスを軽減し、ホルモンバランスを整え、健康全体に役立つ大きな戦略のほんの一部でしかないということです。栄養や、規則正しい睡眠・身体活動といったその他の生活要因は、バランスの取れた状態になるにあたって密接に関連しています。
アダプトゲンハーブは副腎および免疫の健康をサポートします。最適な副腎および免疫の健康を持つバランスのとれた体は、ストレス、怪我、感染症から容易く回復します。また、毎日のストレスや不安にも簡単に対処できます。これはまさにアダプトゲンハーブがあなたのためにしてくれることです。
アダプトゲンは安全に使用できますが、小さなお子さま、妊娠中、授乳中の女性、免疫抑制薬または血液希釈剤、血圧・血糖値を下げる薬などを摂取している方には推奨されていません。もし慢性疾患を患っているようであれば、アダプトゲンを試してみる前に、必ず登録医療専門家に相談をしてください。
翻訳者: 渡辺秀平
参照:
- Marc Maurice Cohen. Tulsi - Ocimum sanctum: A herb for all reasons. J Ayurveda Integr Med. 2014
- Park et al. "Antiobesity effect of Gynostemma pentaphyllum extract (actiponin): A randomized, double-blind, placebo-controlled trial." Obesity (Silver Spring, Md). 2013
- Huyen et al. Gynostemma pentaphyllum Tea Improves Insulin Sensitivity in Type 2 Diabetic Patients. Journal of Nutrition and Metabolism
- Lüthjea et al. Gynostemma pentaphyllum exhibits anti-inflammatory properties and modulates antimicrobial peptide expression in the urinary bladder. Science Direct. Journal of Functional Foods. Volume 17August 2015